近藤誠医師は“本物のがん”という言葉を使われます。
小さいうちからあちこちに転移して命を奪うがんのことです。
そもそも、がんとはそのような病気を指していたのでしょうが、
なかには、死ににくい、死ぬまで相当時間がかかるがんも混じっている。
だから、あえて“本物のがん”と表現したのでしょうが、たしかに
タチが悪く進行が早い、どうしようもないがん、は存在します。
私は、“本物のがん”とは言わず、“タチが悪いがん”と呼びますが、
がんのなかには本当に手をつけられないくらい悪いがんがあります。
わざわざ、“本物のがん”というからには、偽物のがんもあるのでしょう。
偽物とは、なかなか死なない、あるいはまず死なないがんのことでしょう。
それを“がんもどき”と呼ぶのかどうかは知りませんが、がんを
二つのタイプに分けて考えると、一般の人には分かりやすいでしょう。
しかし問題は、世の中のがんは、“がんもどき”と“本物のがん”の
2種類しか無い、と主張する医師がいるから、とてもおかしな話になるのです。
“がんもどき”のようながん、もあります。
“本物のがん”のようながん、もあります。
しかしこの二つしかない、二つのどちらかに必ず分けられるというと
まったく次元が違う話になります。
もちろん、両者の中間がいくらでも存在するのです。
また、生まれつき“がんもどき”か“本物のがん”のどちらかである
ともいうから、話がずいぶんおかしくなるのです。
人間にたとえたら、生まれつき善人と悪人の2種類しかいないということです。
もちろんその間に、いろんな人間がいます。
また善人が徐々に悪人になったりすることがいくらでもあります。
要は、両者の中間がいくらでもあり、さらに揺れ動くこともあるわけです。
2元化、2極化すると、話は分かりやすくなります。
考えることは「二つのうちどちらなのか」だけで済み、スッキリします。
私は、
“がんもどき”のようながんもあるし、
“本物のがん”のようながんもある、と言っています。
しかし、
両者の間がない、生まれつきどちらかしかない、という考え方はしません。
私は運命論者ではない、と言ったほうが分かりやすいのかもしれません。
参考文献:
長尾先生、「近藤誠理論」のどこが間違っているのですか?(ブックマン社)