今日は、大腸の“がんもどき”の話をします。
大腸の内視鏡検査をしていると、胃より“がんもどき”がたくさん見つかる気がします。
大腸ポリープと呼ばれる病変は、組織学的には大部分が腺腫というもので
グループ2ないし3と表示され、基本的には良性です。
しかしポリープの大きさが2~3cmになると、その良性のポリープの一部に
がんができていることがよくあります。
すなわち、良性ポリープの一部だけがグループ4ないし5と表現されます。
たとえ1mmでもがんがあれば、その病変は「がん」として扱われます。
実際、その「がん」の部分をもし放置していた場合、ゆっくり深く潜っていき
筋肉層に達して、早期がんから進行がんに至る例があることが知られています。
それでも、リンパ節や遠くの臓器に転移することは極めて稀なので、概して
ポリープの形をした大腸がんは、それだけではなかなか死ににくいがん、と言えます。
つまり“がんもどき”的であると。
また、LST(側方発育型腫瘍)と呼ばれる病変もあり、これは横幅は大きいのですが
基本的には良性で、一部にがんが見つかっても、あまり悪さをしないがんです。
しかし、中には深く潜って進行がんになる可能性もあるので、若年者のLSTは
内視鏡的に切除することが多いかと思います。
考えてみれば、ずいぶんたくさんの“がんもどき”的な病変を内視鏡で切除してきました。
いいことをしているのかあまり実感がないまま、事故を起こさないことだけを祈りながら。
“がんもどき”と聞けば「おでんですか?」と返すのが、普通の人でしょう。
しかし医学の世界にも“がんもどき”とも言うべき病変はいくらでも存在します。
もし若者であれば、お先がそう長そうなのでしっかり治療しておく必要があるのでしょう、
すでに後期高齢者であれば、なにもせず放っておく、という選択肢も十分アリのはずです。
実は両者の線引きは、実はとても難しい課題です。
家族としっかり話し合っておくことしかありません。