がんの本を書くと、それを読んでくれたがん患者さんが相談に来られます。
超忙しい外来の中にそんな人が混じっていると頭がパニックになりそうになります。
始発に乗って遠くから深刻な相談に来られた方を、5分で返すことはできません。
かといって30分かけて話を聞くとその後の患者さんの待ち時間が30分長くなる。
すると待ちきれない患者さんが暴れて、それを止めるのにまた時間がかかる。
がんの相談はドミノ倒しのように大渋滞を引き起こすのでとても怖いのです。
元気ながん患者さんが、「治療を放棄したい」といって相談に来られた。
聞けば、あの本を読み、あのセカンドオピニオン外来に行ってきたという。
また同じ話をイチからするしかありません。
それでも、「決意」がかたい人もおられます。
そもそも、決意がかたければ私のところなどに来る必要はないのですが、
来るということは、どこかに迷いがあり、意見を聞きたいのでしょう。
一方、ヨレヨレになっても、抗がん剤治療の相談に来られる人もいます。
「誰か止めてあげてよ」と思うも、遠くから来た初対面の人に言えません。
思わず近藤誠先生の本を渡してしまったこともあります。
余命1カ月なのに、もう抗がん剤治療じゃないでしょう、と。
私は、がん医療には「治療期」と「終末期」があると思っています。
両者の間を線引きするのは難しいが、患者や家族がまず考えるものと考える。
しかし素人なので、あまりにも極端な結論になりそうな場合もあるので
専門家である医師を交えて、時間をかけて何度も話合うべきだと思います。
同じがん患者さんを見ても
「治療期」も「終末期」も一緒にして、がん医療を全否定するのが近藤誠氏です。
一方、私は「治療期」には上手に医療を受けて「終末期」には緩和ケアを受けようと主張。
つまり、私と近藤誠医師は、
同じでもなければ、
決して相反するものでもありません。
「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」は、発売後すぐに
重版されましたが、現在ネット書店もリアル書店も品薄が続いているようです。
本来は遠くから相談に来られたがん患者さんにお渡ししたいところですが、
私自身の手元にもないのでそれもできず、口で、一生懸命説明しています。
いずれにせよ私の本は、単純な反・近藤誠本、ではありません。
読んで頂ければすぐに分かると思いますが、その本質は、反・医療ムラ本なのです。
貴方のがんは治療期、終末期?
あるいは、その間かな??
がんで療養中の方は、まずは自分自身に何度でも聞いてみてください。