メサペイン(一般名メサドン塩酸塩)という名前の痛み止めがあります。
強オピオイドでも鎮痛困難ながん性疼痛に2012年に認可された薬です。
たとえば、がんが骨や脊髄に転移していた場合、従来の強オピオイドでは
効果が乏しい場合に、メサドンが有効な場合があるとされています。
ただしメサドンは眠気や心電図上の異常所見などの重篤な副作用があるので
これを処方できる医師は研修を受けたものだけで、かなり限定されています。
私は医療用麻薬を毎日処方する身ですが、所詮は開業医なので
メサドンを処方したいのですが、資格を得ることができません。
寝たきりになったがんの在宅患者さんでも、介護タクシーを呼ばれて
必ず2週間に1回の病院通いを余儀なくされます。
“メサドン受診”と呼んでいますが、
新薬なので、必ず2週間毎なのです。
どうせ大がかりの外出をするのであれば、病院という場所ではなく
空気のいい公園などにしてあげたいのですが、“メサドン受診”で精一杯。
緩和ケアは地域にある、と私は言い続けているのですが、
国の決まりでは病院やホスピスの中にしか無いようです。
実は私だけではなく、多くの在宅ホスピス医が困っています。
そしてなにより、患者さん自身とご家族が困っておられます。
これも我が国の緩和ケアの遅れの一例です。
緩和ケアはこうした厳しすぎる規則によっても閉ざされているのです。
参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)