《1947》 今年14回目の退院 [未分類]

週に1人ぐらいの割合で、がんでの旅立ちに立ちあいます。
今週も午前4時の旅立ちがあり、寝ないままの仕事でした。

60歳が近いのに真夜中も(正確には24時間365日)
働いているようなアホな医者は、そうはいないでしょう。

こんなことやっていたら今夜死ぬかもしれない……
そう思うようになって10年くらい経ちましたが、まだ生きています。

不思議なことに、一人旅立たれたら、まるでその入れ替わりのように、
末期がんの人が一人、がん拠点病院から在宅に帰ってこられます。

年中この繰り返しですから、本当に不思議で不思議でしょうがない。
まるで雲の上から、神様がコントロールしているとしか思えません。

大病院から在宅に帰ってくる患者さんは、みなボロボロです。
たとえば、今年に入ってから14回、がんで入院した人が帰ってきた。

「入院する度にどんどん悪くなるんです……」

手術、抗がん剤、放射線、CT、MRI、PET、内視鏡、
点滴、カテーテル治療など、ありとあらゆる医療の繰り返し。

もう余命いくばくも無いのに、16種類もの投薬と
2種類のインスリンの3回打ちが厳しく指示されています。

それでいて、緩和ケアは全く不十分。

今年14回目の入院から解放されて帰宅して、私が初めて訪問した時、
その人は本当にくたびれ果てて、話せない、歩けない、食べられない状態。

涙が出てきそうです。

思わず私は、「いちばん何がしたいか?」と聞いてみました。

「パチンコに行きたい……」
「よっしゃ、必ず俺が連れていってやる。だから言うことを聞いてネ!」

気がついたらそんな詐欺師みたいなことを言っていました。
私も、言った限りは必ず実現するよう、精一杯努力します。

結局、「がん放置療法」の本がバカ売れしているのは、そんな
がん拠点病院への不満が、市民の間に溢れているからでしょう。

がん拠点病院と町医者は、診ているものが全く違うのです。

参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)