《0195》 コレステロールの長生き論争 [未分類]

先日、テレビを見ていたら、日本脂質栄養学会の提唱した
「コレステロールが高い方が長生きする」という説が報道されていて、
思わず見入りました。

有名芸能人がテレビで「悪玉コレステロールを放置したらダメ」と
話しているのに患者さんが混乱するのでは?と驚きました。

健診でコレステロールが高いとチェックされる人が多い。
その結果を持って病院に行くと薬を飲むように言われる。
だから、医者と薬屋はグルではないか?

何となくそのように感じているところに、タイムリーな学会発表が
あったので、よく調べずに報道したのでしょうか。
何でもそうですが、常識と反対の意見を言えば、注目されます。

昔、研修医だった頃、総コレステロール値が500~600という
患者さんを受け持っていました。

家族性高コレステロール血症という遺伝子の異常による病気です。
彼らは、何もしないと20代で心筋梗塞になり、必ず亡くなります。

頸動脈を調べると、動脈硬化でガチガチに狭くなっていました。
頸の動脈の内部を削り取る処置を行い、脳梗塞を予防しました。

彼らはコレステロールを下げるお薬を、通常の倍量を飲んだり、
透析のような処置(アフェレーシス)をしないと、生き延びることができません。
大変過酷な遺伝病です。

ですから「コレステロールが高い方が長生きする」という理屈は、
この事実1点だけを見ても、誤りであるとすぐに気づきます。

しかし、メデイアは面白がって取り上げるので、患者さんは混乱します。
厳密に言えば、LDLコレステロール値は、それだけで、動脈硬化を予想するには、
まだファジーな指標であると言わざるを得ません。

近い将来、「small dense LDL」という、より敏感な指標が取って代わることでしょう。
しかし現時点では、LDLコレステロール値でモノを言う以外ありません。

特に一度、心筋梗塞や脳梗塞を起こした人は、LDLコレステロールの管理が
重要であることは、論を待ちません。
現在も論争が続いているようですが、日々の診療では、そう説明しています。