《1962》 近藤誠理論のどこが正しいのですか? [未分類]

先日、こんなことを聞く若い女性が来られました。
「長尾先生、近藤誠理論のどこが正しいのですか?」

近著「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」を
読まれた、という方でした。

「そうですね、患者さんの声を代弁している点や過剰医療に警告を
発している点が正しいのではないでしょうか」とお答えしました。

すると「早期発見、早期治療は意味がないのですか?」と返ってきたので
「そりゃ、あなただったら意味があるんじゃないのですか?」と言いました。

「ところで、あなたは何をしにここに来たのですか?」と聞くと、
「ここです!」と言って左胸を指しました。

大きなカリフラワー状の腫瘍があり、誰が見ても乳がんそのもの。
思わず「あちゃー」と声をあげてしまいました。

早期がんどころか、バリバリの進行がん・・・

表面が自潰してジワジワと出血しています。
骨や脳への転移が懸念される乳がんそのもの、でした。

「どうしてこんなになるまで放置していたの?」
とは、聞きませんでした。

いまさら言ってもしょうがないし、それよりも先を急ぐと思いました。
すぐに乳腺外科に紹介状を書いから、翌日「すぐに手術します」との返事が。

幸いステージⅡと診断され、乳房切除手術が行われたとの報告を受けました。
彼女は、いまごろ、抗がん剤の説明を受けているのでしょうか?

この件で思ったことは、彼女はこんなに大きな腫瘍があるのに

  • がんもどきではないのか?
  • 早期発見しても意味がないのではないか?

と自己判断されていたことです。

自分のことになると過小評価する患者さんがいることに加えて、
それを後押ししてくれる本が書店にあふれていることもあるのでしょう。

これだけ明らかな病変があってもいろんな解釈があるのだなあ、
医者の感覚と患者さんの感覚はこうも違うのか、と思いました。

参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)