《0197》 がんとイワシの油 [未分類]

先週末、日本静脈経腸栄養学会近畿支部学術集会に参加しました。
テーマは「緩和医療における栄養管理」で、がん終末期の栄養管理を
どうするべきか、議論されていました。

「がん性悪液質」という言葉をご存じでしょうか。
悪液質とは、脂肪や筋肉が減少して体重が減少した状態です。

悪液質になると、がん終末期でありもはや治療の余地はない!?
と、私自身もこれまで思ってきました。

そうなると、抗がん治療を中止して、緩和医療に専念すると……。
しかし、最近では「悪液質=がん終末期ではない!」との見解です。

がん性悪液質になると、CRPという炎症反応が上昇します。
これはがんが、ILー6という物質の産生を促した結果です。
ILー6が増加すると、抗がん剤の効きが悪くなります。

エイコサペンタエン酸(EPA)が、ILー6を下げて、がん性悪液質を
改善するというデータが海外で出てきました。
衝撃的なデータだと思います。

EPAといえば、イワシの油としてあまりにも有名ですね。
血中コレステロール値を下げて、動脈硬化を改善します。

そのEPAには、もう一つ興味深いデータも出ています。
テロメアという寿命に関わる遺伝子を切る酵素の阻害作用です。
EPAが、寿命を延ばす可能性があるという報告です。
そのEPAが、今度は悪液質の改善にも役に立つというのです。

このような試みは、「がん免疫栄養療法」と呼ばれています。
EPAと蛋白質などが沢山含まれた食品が、既に市売されています。
食品ですので健康保険がきかず1カ月に24000円かかるそうです。

がん性悪液質になっても、栄養学の進歩で再び体重を増やすことが
可能な時代になってきたそうです。
抗がん剤治療にも耐え、QOLを向上させる可能性が出てきました。

先週開催された「日本癌治療学会」のイブニングセミナーでも、
三重大学の三木誓雄先生が、がん免疫栄養療法について講演されました。
140人もの医師が、最後まで居残って熱心に勉強されたそうです。
日本人の魚好きの効用が、科学的に解明されつつあります。

私も普段、EPAを飲んでいますが、さっそく、経済的余裕がある
再発がん患者さんに、EPAを多く含む食品を勧めてみました。