「老衰」のテレビ番組に関する辛口コメントについては
個人ブログ「Dr和の町医者日記」の方を見てください。
今日は、「そうは言っても」という現実的な話を書きます。
特養ホームのような物分かりのいい(?)息子さんばかりだといい
のですが在宅医療の現場では子供さんはいろんな要求をしてきます。
口から食べる量が徐々に減ってきたら、検査を要求されます。
胃カメラなら可能ですが大腸カメラは大きな負担になります。
胃ろうはイヤだし、鼻からチューブも悪いらしいので、
高カロリー点滴をしてくれ、という子供さんもいます。
あと、PETやMRIなど、どこかで聞きかじった
精密検査を要求される子供さんも、時々おられます。
「貧血がある」と説明したら、輸血は必要無いのかと問われ
呼吸が苦しそうに見えれば、酸素はどうかと要求されます。
ゼコゼコいえば頻回に吸引したほうがいいのではないかと、
眠らなければ、眠る注射を要求される子供さんもいます。
もちろん丁寧に説明するのですが、なかには簡単には納得されず、
「最期は病院で最高の治療を」と希望される子供さんも少なくない。
本人がそんなことを希望していなくても子供の希望に沿わないと
最悪の場合、訴えられて、罪に問われるのが日本という国です。
訴えられないためには、医者はご家族から要求されたら
いろんな処置をやらざるを得ないという側面もあります。
特養ホームでは80歳以上ですが、在宅には70歳代の老衰もいれば
40歳台の難病やがんや脳梗塞もおられます。
子供たちの要求は時に、ス ゴ イ です。
だから在宅医療に取り組む医師もあまり増えないのかなあとも思います。
早い話が、スゴイ要求への対応が煩わしい、と感じる医師が多いのでは。
あの「老衰」の番組を全国民に見てもらいたい。
小学生や中学生の授業でも教材に使って欲しい。
国の教育システムの中で老衰を教えたり考えたりできないと
世の中は、なかなか変わらないのでは、と思い直しています。