先週末、ご縁あり九州大学名誉教授の藤野武彦先生の講演会を拝聴しました。
http://ib-kenko.jp/2015/10/1005_dm1250_1.html
藤野先生は、私よりちょうど20歳年上の77歳。
九州大学の名誉教授でありながら、福岡と東京にクリニックを持っていて、
認知症の患者さんを診るために、毎週飛行機で往復をされているそうです。
とてもエネルギッシュな“空飛ぶ”町医者でもあられました。
はたして20年後、私も藤野先生と同じように動き回れるか。
藤野先生は、以前より「脳疲労」という概念を提唱されてる医師です。
脳疲労? 聞きなれない人も多くいるでしょう。
私も初めて聞いたときは「脳疲労ってなんやねん!?」と首を傾げました。
たとえば身体の肉体的疲労なら、皆さん日々実感されていると思います。
身体を酷使しすぎたとき、我々はなぜ筋肉痛になるのか。その状態を想像してください。
筋肉を動かし過ぎると、筋細胞の結合組織が損傷して炎症が起きて、痛みが生じるから。
それと同じように、ストレスが恒常的に続くと、脳の神経細胞が酸化して炎症を起こして
「脳疲労」状態になり、その結果、記憶や感覚や思考に異常が起きるという概念。
この過度の「脳疲労」が続くと人は認知症になる、というのが
藤野先生が唱えられている「認知症≒脳疲労仮説」です。
アルツハイマー型認知症に見られるアミロイドβの蓄積は、
脳疲労の「結果」でしかない、と藤野先生は言われました。
すごく頭を使ったあとに「脳疲労」になっていることは、感覚的にわかります。
私なんか、いつも脳疲労状態だと思いますが。(笑)
脳内の神経細胞の酸化や炎症を抑え、しかも神経細胞の新生まで促す
脳内のリン脂質を「プラズマローゲン」といいます。
このプラズマローゲンをサプリメントとして外から摂取すれば、認知症の予防
だけでなく治療にも役に立ついうことを実証した書籍を書かれています。
「認知症は不治の病ではない! 脳内プラズマローゲンが神経細胞を新生する」という
出たばかりの本を藤野先生からプレゼントされ、帰りの新幹線で夢中で読みました。
脳疲労状態では、体内のプラズマローゲン量が減少していることは以前よりわかっています。
現在大規模な臨床実験が実施中で、この実験結果の医学雑誌への投稿準備もされていました。
いま、認知症の治療は大きな変革の時期を迎えていると感じます。
現在、多くの認知症患者さんに「コウノメソッド」で対応していますが、
症状が改善されていることにご本人も家族も喜ぶので、私も嬉しいです。
同じように、このプラズマローゲンもフェルラ酸と同様に早速、ご希望される患者さんに
試してみたいと強く思いました。
たった1カ月で「笑顔が戻った」「会話ができるようになった」とか、「ありがとう、悪かったね」
などの気遣いが戻ったという改善は、認知症が「治る」ということと同義のように感じました。
藤野先生は、講演後の食事会でこんなお話をされました。
「アルツハイマー型認知症になったアマチュア囲碁六段の70代の男性の患者さんが、
初段の人にも勝てなくなってしまいました。彼は人生の楽しみを奪われ、性格も攻撃的になり、
家に籠ってしまいました。しかし、プラズマローゲンを試してたったの3カ月で、再び
四段、五段の人に楽に勝てるようになった」というのです。
現在は、デイサービスに来ている認知症の人達に、ボランティアで囲碁を教えに通っています。
囲碁で再び勝てるようになるということは、脳疲労が解消し、認知症が改善したのでしょうか。
「何よりも、本人に笑顔が戻り、誰かの役に立つ喜びを見出したことが最良の結果です」と。
笑顔が戻り、誰かの役に立つ喜びを再び得ること。
認知症を良くしたいという夢を追い続ける藤野先生の言葉から、多くの学びを得た午後でした。
ノーベル賞受賞に日本国内が沸いていますが、「研究」は面白いですね。
しかし気持ちも若くないと、できないものです。