《0215》 盲腸の手術をした人に「盲腸です!」 [未分類]

右の下腹が痛いと訴える患者さんが入ってきました。
問診とお腹の触診から、急性虫垂炎を疑いました。
通称「盲腸」というやつです。

白血球を迅速測定すると、案の定、
12000まで上昇していました。
通常は、8000までです。

「いわゆる、盲腸ですねー」と、丁寧に説明しました。
すると患者「盲腸は、子供の時に手術で取りましたが」と。
「ええー!」

もう一度、お腹を良く診ると、薄い手術痕がありました。
腕のいい器用な外科医が手術したのでしょう。
あまりにも傷が薄くて小さいので、つい見逃してしまったのです。

狼狽した私は、とっさに説明を変えました。
「そうそう、盲腸では無く、大腸憩室炎ですね」
そして抗生物質を点滴すると、数日で軽快しました。

それはそれででよかったのですが、
1カ月ほどおいて、念のため肛門からバリウムを入れる、
「注腸造影検査」をすると、大腸がんが見つかりました。

私の説明は、今度は「大腸がん」に変わりました。
もはや、本人も家族も、あまり私を信用していないようです。
仕方がありません。

「盲腸」にまつわる誤診は、数え切れない位ありました。
多かったのは、大腸憩室炎以外には、「骨盤腹膜炎」です。
手術して初めて、誤診に気が付いたこともありました。

大昔の研修医時代は、外科手術の助手もしていました。
誤診を説明する時に、気まずかったことを鮮明に覚えています。
外科医は「盲腸に始まり盲腸に終わる」と言われます。
その通りだと思いました。

盲腸を手術したのに、「盲腸」
胆石を手術したのに、「胆石」
胃を全摘したのに、「胃潰瘍」

こんな恥ずかしい間違いだけは、しないでおこう。
まあ、してもすぐに患者さんが間違いを指摘してくれますが。