《0229》 消えたポリープを追え [未分類]

検診でバリウムを飲んで、「胃のポリープ」を
指摘された方は少なくないでしょう。

「ポリープを認めますが、心配ありません」と
書いてあると、余計に心配になるでしょう。

1年前の胃透視では30個もあった胃のポリープが
いざ胃透視と内視鏡検査をしたら、全てが消えていた……

最初は、何かの間違いかと思いました。
しかし、1年前の胃透視の写真にも胃カメラの写真にも
沢山のポリープはしっかり写っていました。

間違いではありません。
現実です。
何か事件が起きて、30個ものポリープが消え去ったのです。

「消えたのだからいいじゃないか」とは思いませんでした。
「なんで消えたのだろう?」
まるで探偵のように、消えたポリープの周辺を洗いました。

消えたポリープは、間違いなく1年前の検査では存在し、
組織検査では「胃底腺ポリープ」の像でした。
これは胃底腺の過形成と粘液から構成されるポリープです。

胃のポリープは、過形成性ポリープと胃底腺ポリープに
2分されます。
後者は、「胃に出来たニキビ」と私は勝手に呼んでいます。

詳しく調べて行くうちに、そのように胃底腺ポリープが
自然消失した患者さんを、さらに3人見つけ、
専門学会に発表したり、論文を書いたりしました。

消える前の胃の粘膜は、どれもとてもとても綺麗でした。
しかし、ポリープが消えた後の粘膜は、きたないのです。
顕微鏡で見ると、強い炎症がありました。

結論から言うと、当時発見された「ピロリ菌」に感染し、
急性胃炎が起こったのに伴い、ポリープが消えたようでした。
ピロリ菌に急性感染すると、強い胃炎を起こすのです。

そのころ胃底腺ポリープに取りつかれたように研究をしました。
このポリープを持つ患者さんは、50歳前後の女性であること。
元来、ピロリー菌には感染しておらず、胃年齢が超若いこと。

さらに、このポリープを持つ人は、
胃がんになりにくいこと。
胃の襞の太さが細いこと。
胃粘膜の萎縮が全くないこと……

その後、様々な興味深い真実が判明しました。
どうやら私の推論は、正しかったようです。
「ポリープ研究」は、「慢性胃炎学」へと続いています。

と言う訳で「胃ポリープ」で相談に来られた患者さんには、
ついつい話が長くなります。
大昔の論文を見せながら「心配ない」と説明しています。