《0241》 あわいの時間 [未分類]

毎週、誰かをご自宅で看取っています。
看取り人の多くは、ご家族です。
死亡時間の定義については以前書きました。

「呼吸が止まってから20分間心臓が動いていました」と、
最近看取った患者さんのご家族が言われました。
「脈がだんだんゆっくりになって、やがて止まった」と。

思わず、鳥取にある野の花診療所の徳永進先生が書かれた
「あわいの時間」というエッセイが、頭に浮かびました。

確か徳永先生のは40分間、心臓が動いていたと思います。
通常は呼吸が停止すれば、ほぼ同時に心臓も停止します。
しかしこのように少し間が空くことがあるようです。

病院の詰所ならモニターがあるので、以前、そのタイムラグに
気がついたことがあります。

「あわい」とは、事と事の間のこと。
すなわち「呼吸停止」と「心停止」の間。

このポッカリ空いた不思議な時間に、看取り人のすべての想いが
凝縮されます。

徳永先生は、先生自身が、「あわいの時間」に何とも言えない体験を
されたそうですが、私の場合は、脈を取ったご家族が何とも言えない
貴重な体験をされたようでした。

忙しい現代生活。
わずか10分を待てなくなった私たち。

そんな現代人も、人生の最期くらいは、「あわいの時間」を、
看取り人として、味わってもいいのではないかと思います。

ただし、誰にでもこの「あわいの時間」があるわけではありません。
私は、2例経験しただけです。