《0249》 「医療ミス」と「医療事故」 [未分類]

我々は「ミス」という言葉を、即座には使いません。
まず、ことが起きたら、「事故」として検証していきます。
その事故は、予見可能であったのか、不可抗力だったのか。

現在、JR福知山線脱線事故の責任を問う裁判中です。
元社長さんと、遺族の言い分は、見事に正反対です。
長い裁判になるのでしょう。

医療裁判も、これと少し似たようなところがあります。
予見可能か、不可抗力だったのか判断するのは、
難しい時が多くあります。

大腸内視鏡検査や内視鏡手術で、腸に穴が開くことは、
「偶発症」とも呼ばれています。
頻度は少ないものの、ある一定の確率で起こってしまうもの。

ですから、事前に、そのように書かれた承諾書に
患者さんはサインを求められます。
サインしないと検査してもらえないので、サインされます。

「死んでも文句は言いません」のような
怖いことが書かれている場合もあります。
実際、死んだら、裁判になりますが。

当院ではありませんが、大きな病院では
胃カメラでも承諾書が必要です。このように
多くの医療行為に承諾書が必要な時代になりました。

そして不幸にして、何かトラブルが起こった場合、
医療者は「事故」として捉え、原因を究明します。
「謝ってはいけない」という人もいますが、私は謝ります。

「過失」のことも、「不可抗力」のこともあります。

患者さんが、「医療ミス」として怒ることにも、
我々にはある一定の確率で起こり得る「偶発症」
であったり、「事故」であったりします。