平日の午前に、盲腸(急性虫垂炎)の方が来られました。
近隣のいくつかの病院に電話しましたが、全て断られました。
夕方になり、やっと遠くの病院が見つかり、搬送できました。
いまや外科医は、絶滅種と言われています。
小児科、産科なども、絶滅の危機に瀕しています。
一方、「医療ミス」で訴えられにくい診療科が大人気です。
在宅医療も、隠れた「ハイリスク科」と言われています。
「家で看取るなんて。よく訴えられないな?」と、
同業者から不思議がられるくらい、「野蛮な行為」らしい。
患者さんは、何かと「タライ回しにしやがって」、
「最近の医者はけしからん」、
「医療ミスで訴えてやる」と、必ず怒ります。
救急車を呼んでも、行き先が見つからないと、
「一体、病院の医者はどうなっているんだ!」と、
市民の怒りは頂点に達します。
しかし、現場は、一般の方には分かりにくいかも
しれませんが、かなり荒んでいます。
人がいません。
良い悪いではなく、現実は、現実です。
私も毎日、搬送先の病院探しで苦労しています。
もちろん、救急隊員の方もご苦労されています。
先日、骨折した患者さんに一晩待ってもらいました。
もはや「医療ミス」や「訴える」というレベルではなく、
「そして誰(医者)もいなくなった」という医療圏もあります。
それを「医療崩壊」と呼ぶ人もいます。
テレビでは、ブラックジャックのような「若き名医」ばかりが
登場しますから、「そんなはずはない」という人が多いでしょう。
実際、このあたりの「乖離」は、まだ充分に報道されていません。
「兵庫県立柏原病院の小児科を守る会」のような市民の活動で、
地域医療が見事に回復し、維持できているところもあります。
これは、「患者さんが医療を作った」一例だと思います。
私は、今月、5冊の本を出版しました。
「医者は医療を変えられない。変えれるのは患者力のみ!」
と、1つの本の帯に書いていますが、まさにこれが本音です。