《0268》 許せない、子供の遺体 [未分類]

掘り起こされた人がトタンに載せられ続続と運びこまれます。

すでに死んでいる。

完全に冷たくなっています。

 

「もう亡くなっていますから・・・」と言いかけると、

「折角掘り起こして来たんだから蘇生処置を」と懇願されました。

そうして、無意味な心臓マッサージを何人かにしました。

 

鼻の中には、壁土がいっぱい詰まっていました。

即死ではなく、少しは息をしてから亡くなったのでしょう。

さぞかし、無念であったことでしょう。

 

ふと、見ると横に小さな袋が2つありました。

同僚に尋ねました。「あれは何?」

「子供の遺体だよ。小さな兄弟だ」

 

そこまで、全ての感情を押し殺して、朝から

無心を言い聞かせ処置に走り回ってきました。

心のどこかで、「正夢であってくれ」と祈りながら。

 

しかし、その2つの子供さんの遺体を見た瞬間から

ずっと押し殺して来た感情が、一気に爆発しました。

 

涙が溢れて何も見えなくなりました。

嗚咽が自然とこみ上げてきて、止まりません。

 

この文章を書きながら、

再び、前が見えなくなっています。

 

神に怒りました。

これは酷過ぎる。

 

自然に涙が流れるなか、処置を続けました。

横を見ると、他の医者たちも泣いていました。

こんなひどい光景には耐えられない・・・

 

自分は医者として未熟だと思いました。

しかし、子供さんの遺体だけは、今も、許せない。

 

普段、どんなにつらいことがあっても、

あの時の小さな袋を頭に浮べて自分を励まします。

「こんなことは、たいしたことじゃない」

 

老化や病気ではない。

神の悪戯による「死」があることを、

初めて知りました。(続く)