掘り起こされた人がトタンに載せられ続続と運びこまれます。
すでに死んでいる。
完全に冷たくなっています。
「もう亡くなっていますから・・・」と言いかけると、
「折角掘り起こして来たんだから蘇生処置を」と懇願されました。
そうして、無意味な心臓マッサージを何人かにしました。
鼻の中には、壁土がいっぱい詰まっていました。
即死ではなく、少しは息をしてから亡くなったのでしょう。
さぞかし、無念であったことでしょう。
ふと、見ると横に小さな袋が2つありました。
同僚に尋ねました。「あれは何?」
「子供の遺体だよ。小さな兄弟だ」
そこまで、全ての感情を押し殺して、朝から
無心を言い聞かせ処置に走り回ってきました。
心のどこかで、「正夢であってくれ」と祈りながら。
しかし、その2つの子供さんの遺体を見た瞬間から
ずっと押し殺して来た感情が、一気に爆発しました。
涙が溢れて何も見えなくなりました。
嗚咽が自然とこみ上げてきて、止まりません。
この文章を書きながら、
再び、前が見えなくなっています。
神に怒りました。
これは酷過ぎる。
自然に涙が流れるなか、処置を続けました。
横を見ると、他の医者たちも泣いていました。
こんなひどい光景には耐えられない・・・
自分は医者として未熟だと思いました。
しかし、子供さんの遺体だけは、今も、許せない。
普段、どんなにつらいことがあっても、
あの時の小さな袋を頭に浮べて自分を励まします。
「こんなことは、たいしたことじゃない」
老化や病気ではない。
神の悪戯による「死」があることを、
初めて知りました。(続く)