自宅が全壊した看護師さんがいました。
お店では、従業員が犠牲になりました。
その上、自らも足を骨折していました。
しかし、彼女は病院で働き続けました。
足を引きずりながら、震災当日から。
「白衣の天使」という言葉を思い出しました。
別の看護師さんは震災当日、親が車で病院に送り届けました。
親が「病院がお前を必要としているだろう」と言ったそうだ。
「家のことは放っておいて、病院でご奉仕しなさい」と。
もちろん、家族を優先した職員もいたでしょう。
それはそれで、大きな仕事でした。
しかし自分を後回しにしてご奉仕した名も無い人が沢山いた。
病院は、まさにそうしたボランテイアの溜まり場でした。
誰に頼まれることなく、あちこちで勝手に仮眠しながら。
私自身も仕事とボランテイアの区別がありませんでした。
被災者が、被災者を助けていました。
こんな単純な事実はあまり意識されていないようでした。
しかし、事実でした。
数日後には、外から多くのボランテイアが入ってくれました。
日々、いろんな医療チームが助けに来てくれました。
これらは、本当に嬉しかった。
また全国の知人から、お見まいの電話や手紙を頂きました。
これにも本当に勇気づけられました。
大きな精神的な支えになりました。
しかしその後、他所で起きた災害に何もできていない自分がいます。
情けない。
「素人ボランテイアは要らない」との言葉に素直に引き下がっています。
あの経験から得たことは、
個人の力は大きい。時に社会を動かす。
そして勇気が出して行動することの大切さ。
あの時、一緒に無我夢中で働いた医師や看護師たちと、
現在も一緒に仕事をしています。
あの経験が、絆を強めてくれたような気がします。
今日で、16年。
あの日の記憶を、改めて心に刻み込みたいと思います。
(終わり)