《0273》 被災者が被災者を助けていた [未分類]

自宅が全壊した看護師さんがいました。

お店では、従業員が犠牲になりました。

その上、自らも足を骨折していました。

 

しかし、彼女は病院で働き続けました。

足を引きずりながら、震災当日から。

「白衣の天使」という言葉を思い出しました。

 

別の看護師さんは震災当日、親が車で病院に送り届けました。

親が「病院がお前を必要としているだろう」と言ったそうだ。

「家のことは放っておいて、病院でご奉仕しなさい」と。

 

もちろん、家族を優先した職員もいたでしょう。

それはそれで、大きな仕事でした。

しかし自分を後回しにしてご奉仕した名も無い人が沢山いた。

 

病院は、まさにそうしたボランテイアの溜まり場でした。

誰に頼まれることなく、あちこちで勝手に仮眠しながら。

私自身も仕事とボランテイアの区別がありませんでした。

 

被災者が、被災者を助けていました。

こんな単純な事実はあまり意識されていないようでした。

しかし、事実でした。

 

数日後には、外から多くのボランテイアが入ってくれました。

日々、いろんな医療チームが助けに来てくれました。

これらは、本当に嬉しかった。

 

また全国の知人から、お見まいの電話や手紙を頂きました。

これにも本当に勇気づけられました。

大きな精神的な支えになりました。

 

しかしその後、他所で起きた災害に何もできていない自分がいます。

情けない。

「素人ボランテイアは要らない」との言葉に素直に引き下がっています。

 

あの経験から得たことは、

個人の力は大きい。時に社会を動かす。

そして勇気が出して行動することの大切さ。

 

あの時、一緒に無我夢中で働いた医師や看護師たちと、

現在も一緒に仕事をしています。

あの経験が、絆を強めてくれたような気がします。

 

今日で、16年。

あの日の記憶を、改めて心に刻み込みたいと思います。

(終わり)