比較的元気な生活習慣病患者さんに混じって、
がんや難病の終末期の方が、何人か通院されています。
本来在宅医療の対象であってもタクシーなどで介護者と来られます。
思い切ってある末期がん患者さんに「往診しましょうか?」と
声をかけてみました。
すると「まだまだ、タクシーで通院しますよ」と気丈な返事でした。
しかし気になって、翌日の帰り道にご自宅に寄ってみました。
恐る恐る、家の前から電話すると、
「何しにきたんだ。私は元気だから帰りなさい」と追い返されました。
しかし、その翌日、帰る時に御家族から焦った声で電話がありました。
今度は、「容態がとても悪いので、今すぐに来て欲しい」とのこと。
行けば断られ、行かないと呼ばれる・・・
実はこのようなことが頻回にあります。
往診するといつもに増して衰弱した患者さんが横たわっていました。
口を開くのもやっとで、朝から何も食べていないとのこと。
一目見てインフルエンザかと思いました。
翌朝一番、訪問看護師さんに訪問看護をお願いしました。
案の定、インフル簡易検査が陽性でした。
どこか感染したのです。
きっと、3日前の外来受診時に感染したのでしょう。
インフル診療は別棟で分離して行っていますが、
完全に分離できているとはとても言えません。
衰弱した患者さんには、インフルなどの院内感染を防ぐため
優先的に診察したり、一時的でも在宅医療をお勧めしています。
しかし、現実には通院医療を希望される人が圧倒的多数です。
「私はそこまで弱っていない。失礼な」
「無理してでも通院したほうがリハビリになる」と、
異口同音に言われます。
お気持ちを尊重しつつも、内心ドキドキしながら診察しています。
院内感染させやしないか・・・
しかしどうやらこの患者さんは、その可能性が高いようです。
幸い、タミフルと点滴で、回復傾向にあります。
そしてこれを契機に、在宅医療に移行しそうです。
まあ、こんな感じで在宅医療が始まることもよくあります。
この時期、病院や診療所で、様々な感染症をもらわないように
くれぐれもご注意ください。
待合室でもマスクをしてウイルスから身を守ってください。
現在、医療機関はインフル患者などが集まる大変危険な場所です。
衰弱した人が介護者に抱えられて、高いお金を払ってタクシーを
飛ばしてリハビリがてらに行くところではありません。
電話で空いている時間を聞いてから行くとか、お薬だけなら
家族に代理をお願いするという方法もあります。
人混みなど、危ない場所はできるだけ避けてください。