アルコール依存症で悩んでいる患者さんが多くおられます。
どうしてもやめられず、昼間からつい沢山飲んでしまう……。
そんな患者さんと日々、向き合っています。
アルコールとの付き合い方は、意外と難しいテーマです。
周囲の迷惑にならなければ、単に「アルコール依存」ですが、
迷惑になって健康を損ねれば「依存症」という立派な病気です。
「晩酌」という習慣が、依存症の入り口と言われています。
最初から「依存症」の方はいません。
長い時間をかけて徐々に「依存症」になっていきます。
自分で、「依存症」であることに気がついていない方もおられます。
日本のアルコール依存症患者さんは約80万人。
予備軍は、その5倍と言われています。
生活習慣病と並んで、大きな課題になっています。
団塊の世代が退職して、朝から酒を飲む人が増えているそうです。
高齢者依存症の増加です。
アルコール依存症とは、脳内報酬系が形成された病態です。
脳内報酬系といえば、ニコチン依存症も同じ脳内回路です。
しかしアルコールの方が、ニコチンより依存度が高いです。
その上に、覚せい剤、ヘロイン、コカインなどがあります。
自殺者の98%が、精神疾患を合併しています。
その3割がうつ病で、2番目にアルコール依存症がきます。
「死」と隣り合わせなのが、アルコール依存症という病気。
アルコール依存症は、「否認の病気」とも言われています。
本人は、依存症であることを認めないし、隠します。
家族が、お酒を買い与え、依存症を助ける場合もあります。
さらに、お医者さんも依存症と分かっていても依存症を
見て見ぬ振りをする場合があります。
厄介なことに触れると患者さんが怒って来なくなるからです。
さらに、日本社会もタバコに比べてお酒には極めて寛容です。
お酒ぐらい、晩酌ぐらい、深酒ぐらい、まあいいじゃないか、
という風潮が、依存症発症の根底にあります。
アルコール依存症と正しく診断し、本人がそれを認め、
乗り越えたいと願うところから治療がスタートします。
抗酒薬というお薬を上手く使い、外来で治療します。