《0305》 バナナを2本食べてから亡くなりました [未分類]

末期がんといえば、何日も寝込んで少し昏睡状態に陥る、
といったイメージがあるかもしれません。
しかし実際には、死ぬ直前まで食べてお話ししています。

大腸がん末期のある患者さんの場合。
がんが全身に転移して徐々に衰弱してきました。
食事量も減り、日中もウトウト寝ているようになりました。

こうなると、あと数日です。
さらに呼吸が、努力様に変化してきました。
そこでご家族に「あと1日ですよ」と説明しました。

ご家族は、キョトンとしていました。
まだ食べてお話ししているのだから、と。
翌日の昼にもバナナを2本、「美味しい」と言って食べました。

別の医師が往診し、「もう食べない方がいいよ」と説明しました。
誤嚥を心配した助言だったようですが、肝腎のご本人は、家族に
「何で、先生はあんなことを言うんやろ?」と訊いたそうです。

もう1本バナナを要求しましたが、家族は止め、その3時間後に、
静かに旅立たれました。
私の「予言」通り、ピッタリ1日後、でした。

私が訪問した時には、ご家族一同10名くらいが集まっていました。
旅立ちから2時間も経過していたので、泣いている人はいません。

みんなから「死ぬ直前でもバナナを食べられるの?」と質問されました。
2本という量に私も少し驚きましたが、「時々経験します」と説明しました。

旅立たれた方のお顔は、本当に荘厳で綺麗でした。
しかし、「何で俺、死んでいるんだろう?」と言っているようでした。

大半の人は自分が死ぬとは知らず、死んで行きます。
明日があると思っているから、いつものようにバナナを食べます。
「死」は、常に他人事です。

死んで一番驚いているのは、間違いなく本人でしょう。
本人以外は全員、死ぬことを知っているのだから。

かと言って、本人に「あと1日」と言うことは絶対にありません。
この人は、大腸がんの末期状態、がん性腹膜炎でした。
こんな話を病院の先生にしても、信じてもらえません。