《0306》 「がん性腹膜炎」でも、死ぬまで結構食べられる [未分類]

胃がんと大腸がんは二つ合わせれば、肺がんよりはるかに多いがんです。
最期は、「がん性腹膜炎」という状態になることが多い。

小腸や大腸が、お腹の中にばら撒かれたがん細胞によってあちこちで癒着して、
スムーズに蠕動運動できない状態です。
腸閉塞ないし、腸閉塞の準備状態と言えます。

腸閉塞にも色々あります。
腸の内腔が完全に閉塞していれば、絶対に通過できません。
しかし、癒着により上手く蠕動できないものは改善可能です。

腸閉塞になると、腸の内腔は著明に拡張し多量の腸液が貯まります。
また、腸の壁も水分を多く含んで、著しく浮腫みます。

東洋医学的には、「水毒」状態。
要するに、水が過剰の状態です。

食べられないからという理由で、大量の点滴をすると、その水分は
腸の内腔や腸壁に移行し、「水毒」に拍車をかけます。

すると嘔吐し続けますから、鼻から管を入れることになります。
胃内への管では、腸液を充分に排液できませんから、透視下で
小腸にまで管を進めてそこに留置します。

そうなると、もちろん食べることができません。
「がん性腹膜炎の終末期になると食べることはできない」というのは、
消化器の医者の常識かもしれません。
大昔は、私もそう思っていました。

しかし、在宅ホスピス医に身を転じて、多くの患者さんから
教えていただいたのは、「最期まで食べられる」という事実です。
条件はただ一つ、余計な点滴をしないこと。

ただそれだけです。
たったそれだけのことが、現実には行われていません。
鼻からチューブを入れたまま、亡くなる人が病院では普通です。

しかし、在宅ホスピスでは、そのような人は皆無です。
昨日書かせていただいた、最期にバナナを食べた人だけでなく、
皆さん、何がしかの食べ物を口にされています。

生きるとは、食べること。
「がん性腹膜炎でも、死ぬまで結構食べられる」と話しても
お医者さんからは、なかなか信じてもらえません。

しかし自分の中で、その信念は、深まるばかりです。
がん性腹膜炎の最期は、自然に任せることです。

2日間食べられなくても、3日目には何か食べられます。
「脱水」こそ、「良き友」なのです。