《0332》 天皇陛下のお言葉に耳を澄ます [未分類]

昨日、天皇陛下のお言葉に耳を澄ましました。
犠牲者、被災者へのお見舞いと励ましのお言葉、日本人の
「雄々しさ」をたたえる内容でした。

そして、何にも増して、この大災害を生き抜き、被災者としての
自らを励ましつつ、これからの日々を生きようとしている人々の
雄々しさに深く胸を打たれています。

少量のガソリンや水を調達するのに、半日も並ばなくてはなりません。
集配拠点に救援物資は届けども、避難所に分配することができません。

考えられないほどの、非効率、不合理、非条理。
被災現場がいくら救いを求めても、ほとんど叶っていません。

「政府や行政は、一体どうなっているのか?」
「我々は見捨てられたのか?」
と、多くの嘆きが届いています。

これらは、16年前と同じ光景、まさにデジャブです。
私自身も、阪神大震災時には、まさにそう叫んでいました。
しかしその時の経験から思うことを、正直に書いてみます。

行政に期待するのは、半分あきらめた方がいいと思います。
自分の頭で考え、自分の力(共助)などしか頼れません。
自分を助けるのは、自分自身しかいません。

偶然、最近出版したばかりの拙書「震災が与えてくれた町医者力」
(エピック)には、はっきりとそのように書きました。

この本に書いたことが、皮肉にも、今現実世界で起きています。
危機管理を非難する暇があれば、自分の頭で考えてほしい。

人間は自分の身に降りかからないと他人の痛みが分からない。
震災も様々な事故も本質的には同じである。
そう感じています。

今回の地震は、津波と原発という二重の苦難を抱えています。
交通・通信などのインフラ復興には相当な時間がかかりそうです。

不眠不休で頑張っている人、避難所に身を寄せる人、疎開する人。
粛々と我慢しながら行動する日本人は世界中から絶賛されています。

私は、日々、外来患者さんと対峙し連日の在宅看取りをしています。
15年間で、私が在宅で看取らせていただいた約500人の患者さんと、
今回一瞬の津波で失われた多くの命を、どう受け止めればいいのか……。

矛盾と怒りを秘めながら医療者として目の前の患者さんに寄り添います。
天皇陛下のお言葉に、どこか元気をもらいながら、淡々と日々の業務と
雑務に埋没するしかできません。