《0351》 もし新幹線が無料だったら…… [未分類]

当クリニック横に、津波で家を失われた方が疎開しておられます。
外来受診や往診を通じて、毎日のように雑談しています。

被災者らは、疎開地と被災地を結構往復されています。
被災地に帰っても家も仕事もないとはいえ、当然、様々な用事があります。
そこで一番ネックになっているのは、移動の「交通費」です。

彼らはすべての「もの」を失っています。
尼崎から被災地までのタクシー代は片道約25万円だそうです。

それを値切りに値切って、半額程度で被災地にいったん帰ろうと試みていました。
「4人で乗れば1人3万円程度で帰れるから、新幹線代とそう変わらない」と。
歩けない人もいるのでタクシーの方が助かるそうです。

しかしどう考えても、新幹線の方が移動は便利です。
「もし新幹線が無料ならば何度でも往復したい」と言います。

各地で企画されている「温泉慰安プロジェクト」も移動の交通費がネックです。
被災者全員が新幹線などに無料で乗れたら、どんなにいいでしょうか。

医療と同様に、交通にも、災害救助法をぜひ適用してほしいものです。
阪神大震災時の被災認定は、全壊、半壊、一部損壊の3段階で行われました。
今回は、震災、津波、原発の3要素が存在するので被災認定は複雑でしょう。

しかし今回の新幹線無料パスについては、被災者認定作業は不要と考えます。
医療における災害救助法適用を、そのまま交通にも適用すればいいだけです。

医療機関の窓口での受診申し込みと同じように、新幹線の改札口で
住所・氏名・生年月日の申告のみだけで、乗車OKとします。
認定調査の手間を省くのです。
医療現場では既にできていますから、必ずできます。

疎開やリフレッシュ目的の移動によるストレス軽減や疾病予防効果などを
勘案すると、この施策の対費用効果はかなり高いと想像します。

いつでもお金のことを気にせず手軽に移動できるという安心感は、被災者の
大きな「癒し」にもつながります。
今後予想されるPTSDへの最大の予防策にもなるでしょう。

折しも九州新幹線が開通しました。
被災者は新幹線の駅にたどり着けば、九州までも移動して休養できます。
今こそ新幹線というインフラを被災者のために活用すべきと思います。