《0372》 計画避難のインフォームド・コンセント [未分類]

手術の前に、お医者さんは時間を取って詳しい説明を行います。
もちろん、万一手術が失敗した時の話もしなければなりません。
説明が終わって承諾書を書いてもらって初めて手術になります。

今回、原発周囲の計画避難に住民は戸惑われています。
映像で見る限り、説明の仕方が悪いなー、と感じます。
納得のいく説明とはタイミングと分かりやすさでしょう。

がんの患者さんに、いきなりこう説明するようなものです。
「あなたはがんです。残念ですが来週、手術しましょう。
すぐに家に帰って準備をしなさい」。

こんな説明で、患者さんは納得されるのでしょうか?
通常は、がんの進行度、手術の実際、考えられる合併症、
手術後の見通しなどを、時間をかけて詳しく説明します。

説明が悪いと、「セカンドオピニオン」に走られます。

手術には、充分なインフォームド・コンセントが必要です。
同様に、避難にもインフォームド・コンセントが必要なはず。
権力を行使するからこそインフォームド・コンセントなのです。

普段、お医者さんを非難している人が、いざ自分が当事者になると、
インフォームド・コンセントの難しさを実感しているのではないか。
そんな風に感じます。

医者は、もう医療事故の対応に慣れてしまいつつあります。
一方、企業や政府は、インフォームド・コンセントというものに、
あまり慣れていないように感じます。

同じことを理解してもらうにも、説明一つで結果が変わります。
それほど、インフォームド・コンセントは、意外に難しいのです。
同様に、バッドニュースの伝え方にも、様々な工夫が要るのです。

報道を見ていると、「もし医療なら」と置き換えてしまいます。
昨日、「復興に、総合医の視点を!」と書きましたが、本当に、
経験豊かなお医者さんに入っていただいた方がいいかもしれません。

いつも、世論から責められることに慣れてしまったお医者さんが今こそ、
復興にいい知恵を出せるかもしれません。

皮肉ですが、だんだん、そんな気がしてきました。
震災復興と病気の治療は、どこか似ている気がしてなりません。