《0384》 日常の洗礼 [未分類]

朝一番の往診で、駐車違反に捕まりました。
車が通らない広い道路に4~5分置いたのですが……。
さっそく、尼崎の洗礼をくらいながら診療所に到着。

診察椅子に座るとカルテの番号が100番を超えている。
一生懸命診察しますが、なかなか前に進みません。

そのうち、順番が遅いことへの怒声が聞こえてきました。
福島と尼崎は、テンポが全く違う街です。
田舎と都会。
純朴といらち。

1時まで診察し、在宅ミーティングを終えて、MRさんなど
お客さんの面会を終えると2時。

そこから夕方まで、往診や訪問診療に回りました。
行く家々で、東北地方の様子を訊かれます。
長く話していると、また駐禁で捕まります。

同じようなお話を、短時間で何回もしました。

8日間も休んでいると、私の机の上は郵便物の山。
しかし嵐のような外来で、封筒を開けることができません。
とてもせわしない日常に戻ってしまいました。

夜の診察を終えて、いわき市から避難している方々を訪問。
2週間後にタクシーで10万円かけて、いわき市まで帰るという。
いわき市にいる家族からは、もう少しいた方がいいと言われるが。

津波は終わりましたが、原発は現在進行形です。
福島の避難者、住民の状況はむしろ悪化。
福島の苦悩は何年も続きます。

2カ月近くなった現在、義援金は1円も配布されていません。
家を失い、全財産を失っても、何の支援もありません。
「自助努力」だけで彼らは生きていかねばなりません。

往診や訪問診療をしていると、午前零時を回りました。
ラーメン定食を食べ終わると、午前1時。

テレビで、浜岡原発の停止を知りました。
それだけ東海地震が近いのだろうか。

天災は、ある日突然やってきます。
しかし被災者自身は、サバイバルに必死です。

阪神大震災の被災者が、今、できることはただ一つ。
災害により生活基盤を失った方を支援する法律制定を支援すること。
今回の被災者らが声を上げ、支援する弁護士さんらを支援すること。

医療も介護も、生活支援が根底にあります。
生きていく術がないのに、医療や介護が成立するはずはありません。

今回の震災は、日本人の新しい知恵を呼び覚ましてくれたようです。
昔だったら、「しょうがない」で終わりだったのかもしれません。

しかし現代の日本で、「何もない」ことはあり得ないと思います。
超マイナスを、ゼロに戻す新たな試みが必要です。

孤独死と自殺を防ぐ。
これは阪神の時も言われましたが、今回こそ実現したい。
医療者や行政の最大の使命。

忙しい日常に埋没しながらも、やるべきことが見えてきました。
と、作家の団鬼六氏が亡くなったニュースが飛び込んで来た。
つい先日ツイッターで「よろしゅうお願いいたす」と来たのに……。

今回、被災地で映画監督の塩谷俊氏と2日間ご一緒しました。
スーちゃんの最後の映画、「0(ゼロ)からの風」の監督さんです。
私も偶然にもスーちゃんと少しご縁があったので不思議な感じ。

スーちゃん、こんな悲しい中で亡くなるなんて。
団鬼六さんも、よりによってこんな時に……。
私がいない間に、旅立たれた患者さんも。

多くの死を乗り越えて、生きています。
新しい命、子供たちに、何を残せるのか。
まだまだ、やれることがあります。

今日も、明日も、ずっと仕事です。
事務もレセプトで、ゴールデンウィーク返上で頑張ってくれています。
被災地の行政も、自衛隊も、休みなしで頑張っています。

今は仕方がないと思います。
被災地の方々と、腹の底から笑える日が来るまで。

何度でも、福島に行きたい。
夏の祭りは絶対に行きたい。