《0393》 ローンだけが残った [未分類]

ある港で聞いた話です。
地震の時に飛び起きて、船で沖に向かった漁師さんもいたらしい。
どうせ船が流されるならと津波を乗り越えようとしたらしい。
船が流されると何千万円もの借金だけが残ってしまいます。
そうなると、生きていくことができません。
ならば、波を乗り越えようとチャレンジしたようです。
船は垂直になり、波に呑まれたそうです……。

「もし船さえあれば今すぐ乗りたい」という70歳代の漁師さんに会いました。
壊れた船を恨めしそうに眺めていました。
もし船をプレゼントできればどんなに素敵でしょう。
エンジンだけでもあれば、自分で修理するかもしれません。
深く悲嘆しながらも、漁への意欲は大変強いものでした。

阪神大震災の時、ひどい目に遭った人は、国が少しは助けてくれると思っていました。
しかし届いたのは義援金だけでした。
「自助努力で立ち直りなさい」との考えでした。
結局、国は道路や学校は作ってくれましたが、個人の生活基盤の面倒は見てくれませんでした。

あの漁師さんはおそらく、もう漁に出られないでしょう。
船がなくなっても借金だけは残るからです。
いわゆる二重ローンになるのでしょうか。

自分で立ち直れないなら、生活保護があるじゃないか。
しかし、本当にそれでいいのでしょうか。
我が国には、生活保護が200万人まで増加しています。
被災地でも、保護の申請が増えているそうです。
今日の借金返済に困ったら、生活保護しかないのが現実です。

今回、残ったローン問題に悩んでいる人が、沢山おられるでしょう。
相馬市ではいち早く「弁護士による無料相談室」が設置されました。
その弁護士さんらの報酬も、国が面倒を見るべきだと思います。

阪神大震災は、国と個人の関係が問われた機会でもありました。
しかし、「国は個人資産には関知しない」が結論でした。

今回、それを東北の地に適用すれば大変なことになりそうです。
「マイナスの極み」からの出発になってしまいます。
ということは、再出発すらできない人が多く出ます。

せめてスタートラインに戻すにはどうすればいいのか。
実は、我が国には、まだそのような仕組みがありません。

阪神大震災の苦い教訓を、今回、活かさねばなりません。
東北の方には、ぜひとも声を上げていただきたい。
阪神や東北以外の国民は、その被災地の声を応援しましょう。