《0405》 あの仮設に住み続けたかった…… [未分類]

16年前に仮設住宅に入っていた患者さん親子が来院された。
「昔に比べて今の仮設はよくなったね」と、ため息をつかれた。
当事者でないと分からない感想をうかがいました。

仮設住宅に入って一番最初にしたことは、コタツを買いに行ったこと。
続いて、洗濯機、冷蔵庫を買ったそうです。

今は、いいなあ、 最初から全部ついている。
羨ましい……と。

当時、近くの電気屋さんでは、1日で1年分の電気商品が売れたとのこと。
震災特需があったのです。

仮設の周囲には、喫茶店や飲み屋さんなど「仮設特需」で多くの店が立ち並びました。
しかし今は、全部潰れて一軒も残っていません。

高齢の父親を介護しながら、避難所で3カ月間、 仮設住宅に3年間住まれました。
その後市営住宅に移られたが、仮設の方がよかった、と。
靴を脱いですぐに上がれるので動線が短い。
お客さんが来ても、お互いに便利。
現在の立派な市営住宅よりあの仮設の方がずっとよかった。

当時は、私も開業したばかりでした。
その時、その仮設住宅に往診していました。
結構、楽しそうな雰囲気でした。

クーラーは付いていましたが、退去時には、持って出れなかったそうです。
本当は持っていきたかった、とも。

今回、家具は付いているが、おそらく貸出しでしょう。
国費だから、個人にあげることはできないのでしょう。
あげても変わらない、と素人は思うのですが……。

仮設のまま、長く住んではいけないのでしょうか。
彼女は「今でも、住みたい」と言われました。
ならば最初から仮設ではなく恒久住宅を作れないものか。
相馬の12人タイプの長屋や尼崎の16人タイプの長屋も、近々、試験的に被災地に建つことでしょう。
恒久住宅としての新しい長屋も、模索すべきです。

当時の義援金についても訊いてみました。
高齢の母親も、これについては詳しく覚えていました。
お金の記憶は格別です。
最初に10万円、その後20万円、1年後に、全壊手当として100万円を受け取ったと。
もちろん、とても嬉しかったと。
そしてもちろん今回、義援金を振り込んだ、とも。

仮設は進化しましたが、ご苦労はよく分かると。
16年前の被災者の言葉は、説得力がありました。