《0476》  原発作業員という「戦士」 [未分類]

66年前、ヒロシマに原爆投下された日に
フクシマについて、京都で講演しました。
偶然、後から気が付いた、不思議な因縁。

原発作業員の労働衛生、健康管理について、
産業医、労働衛生コンサルタントとして
2時間半もお話ししました。

産業医の3管理とは
・健康管理
・作業管理
・作業環境管理、です。

普段はあれだけ厳しく管理されている労働衛生が
何故、原発作業員には適応されていなかったのか?
一番厳格に管理されるべき局面だったのに・・・

名前や連絡先さえ分からない作業員もいたそうです。
下請け、孫請け作業員は使い捨てのように働きました。
充分な武器(防具や線量計)も持たされずに送られた。

診療の最後、生活保護受給者に質問されました。
「フクシマの仕事に誘われたが行ってもいいですか?」
何て答えたらいいのか・・・

誰もやりたくない仕事は、下へ下へと降ろされます。
上は現実を直視したくない。
フクシマは、現代の労働組合を炙りだしもしました。

第一原発を、敢えて「戦場」と呼びましょう。
彼らは放射線という見えない敵と闘う、「戦士」です。
戦士をねぎらい、健康管理をするのは当然の責務です。

1日3万円という対価を得ています。
それぞれにある程度納得しています。
しかし、全てを知らされての労働ではありません。

「被ばく承諾書」にサインをさせられました。
「被ばくして死んでも文句は言いません」という紙。
本当に大量被ばくしても本人にも分からない人もいたはず。

一般人の被ばく限度が20mSvなのに、3月15日、
作業員は100mSvから250mSvに上げられました。
何故、一般人には厳しいのに労働者の被ばくには甘いのか。

5月末までに、7800人の作業員が投入されました。
事故後20日で、400人が50mSvを超えました。
うち、120人が100mSvを超えました。

正規労働者の下には、非正規労働者がいます。
企業でいえば、ハケンさんです。
ハケンさんの健康管理は、正規労働者より下でもいいのか。

当初は、シャワーもなく体育館で雑魚寝でした。
プライバシーもありません。
お休みもありませんでした。

何のために産業保健という学問領域があるのか。
何のために産業医や労働衛生コンサルタントがいるのか。
何のために監督官庁や専門医科大学があるのか。

現在は、かなり改善されていると思います。
しかし、一番大切な3月は、充分に管理されていなかった。
監督署が、管理区域に入ったのは、5月末でした。

所詮、全ては、ひとごとなのです。
そして、後になって、必ず何か問題が起こるのでしょう。
そこではじめて大きな代償を払って気が付くのでしょう。

公害喘息、アスベスト中皮腫は、地元・尼崎での事例。
水俣病やイタイイタイ病。
薬害肝炎、薬害エイズも・・・

いつの時代も人間は同じ過ちを繰り返すものなのか。

放射線管理手帳を全員に渡して長期的な
検診、健康管理を実施べきです。
できればクラウドコンピューターで管理して欲しい。

今日も「戦地」で頑張って闘っている作業員に
心から御苦労さまと言いたい、8月6日でした。
ヒロシマ・ナガサキから、フクシマへ。

私は医者なので、健康管理に充分気をつけて、
熱中症にならないようにね、とねぎらいたいです。
「戦士」の皆さま、本当に御苦労さまです。