《0051》 あと、何年生きますか? [未分類]

毎週のように、どなたかをご自宅で看取らせていただきます。

仲良くなったら、患者さんに必ず訊く言葉があります。
「あと、何年生きますか?」。
この唐突な質問に、怒った患者さんは、まだ1人もいません。
大切な質問だと思うので、慎重にTPOを考えて訊きます。
家族はかたずを飲んで、答えを見守っています。
「余命2、3日ですね」とご家族に説明した直後に、この質問を患者さんご本人にしてみるのです。

「そーやな、今は悪いけど、まああと3年は大丈夫やろ」と。
ご家族は、ズッコケています。
しかし、ほとんどの場合、こんな感じの答えが返ってきます。

人間は、他人の将来には冷静でも、自分自身の将来には、案外、楽観的なのでしょうか。
最初は私も驚きましたが、もう慣れました。
「死は自分だけは例外」と思っている人が9割以上だと、感じます。

逆に、元気なのに、「もう死ぬ、もう死ぬ」といつもわめいて、周囲を困らせる人がいます。
実は私もその1人。
50歳の誕生日に、仲間を集めて生前葬をやりました。
しかし、今、「まだ死なないね」と妻に冗談で言われます。
先日開いた「開業15周年パーティー」も、誰にも言いませんでしたが、
自分の中では実は「第2生前葬」の意気込みで、歌って踊りました。

死生観といっても、実に様々です。
たいていの人は、「生は当たり前」と思い、生きています。
楽観的だからこそ、人は生きていけるのでしょう。
作家・山田風太郎氏は晩年「あと千回の晩飯」を書きました。
確かに、歳をとれば、時にはあとどれくらいか?と考えるべきでしょう。
しかし、考えたり、忘れたり。
それが人間だと思います。