《0515》  空腹で痛み止めを飲まないで [未分類]

最後の患者さんは、やはり「大物」でした。
体を折り曲げ曲げながら、入ってきました。
前日、昼食を食べてから急にお腹が痛くなったと。

反射的に、何を食べたか聞きました。
「サバは食べませんでしたか?」
「ああ、食べました。焼いたサバですが・・・」

腑に落ちないま、胃カメラをしました。
胃の中は、あたり一帯が真っ黒でした。
出血して時間がたった血液が付着していました。

AGML、急性胃粘膜障害という状態。
胃全体に浅い潰瘍ができて出血したのです。
探していたアニサキスは、黒い血液が多く不明でした。

内視鏡が終わってから、肝心なことを言ってくれました。
その前日に、「キズシ」を食べたと。
次の日に激痛がして、薬局で痛み止を買って飲んだこと。

おそらくキズシのアニサキス(寄生虫)による胃の痛みに、
市売されている痛み止めによる胃潰瘍が加わった状態です。
肝心のアニサキスという犯人はまだ逮捕出来ていませんが。

アニサキスと言えば気仙沼市大島を思い出しました。
大島診療所の山本馨先生です。
4月30日に大島診療所を訪ねた時のこと。

山本先生は「アニサキスは胃カメラでの虫体除去は不要」
「じんま疹の治療だけでアニサキスは治るんだ」と強調。
それを思い出して、じんま疹の注射をしました。

そうそう、その前日にも同じようなことがありました。
やはり最後の患者さんでした。
めまいを訴える若い女性が初診で受診。

顔色が悪いため、採血するとヘモグロビンが5でした。
重症の貧血ですが、鉄欠乏性パターンではありません。
おまけに白血球が、1万8千もありました。

慌てて血液内科に紹介状を書こうかと思いました。
「白血病かもしれない」と。
しかし腹部エコーでは脾臓は腫れていません。

もしやと思い、聞いてみました。
「何か痛み止めを飲みましたか?」
「はい、市売の痛み止めを1錠だけ飲みました」

これで、すべてが解決しました。
胃カメラをすると、案の上、大きな胃潰瘍がありました。
潰瘍の中に、出血したあとの血管が確認できました。

おそらく一晩で、1.5l以上出血したのでしょう。
急性の出血なので、ふらついて当たり前です。
便が真っ黒なことは、後で聞きました。

最後の患者さんはこのような「大物」が多い。
短時間にめまぐるしい展開があります。
それにしても市売の痛み止めによる胃潰瘍が多いこと。

痛み止めは絶対に空腹で飲まないでください。
胃が痛くて食べれないからと飲んだら、最悪。
まさに弱り目にたたり目です。