《0517》  正しく恐れる、ピロリー菌 [未分類]

胃痛を訴えるひとが、毎日何人も受診されます。
毎日のように痛み止め薬が原因の胃潰瘍を見ます。
痛み止めは絶対に空腹時に飲まないでくださいね。

さて、胃痛のひとには一応胃内視鏡を勧めます。
以前苦しかった人は、二度と嫌だと拒否します。
初回時の辛さが、トラウマになっているのです。

こんな患者さんには、トラウマを除く作業から。
具体的には、鎮静剤の投与を提案します。
完全に眠らせてくれ、と言われる方も多い。

内視鏡時の麻酔は、施設によって様々です。
麻酔をする施設と、麻酔を全くしない施設。
するとしても麻酔薬の種類はいろいろです。

当院ではセルシンという注射を使う事が多い。
まあ、それでも内視鏡を嫌がるひとが多い。
次の提案は、鼻からの内視鏡になります。

さて、内視鏡検査となればピロリー菌検査の希望が多い。
ピロリー菌=胃がんになり易いと、思っている人が多い。
しかしそんな人には、次のように説明します。

ピロリー菌は、日本人の半分にいます。
ピロリー菌で、胃がんになるわけではありません。
ピロリー菌は、胃炎と深い関係にあるのは事実ですが。

これでは、まだ半信半疑です。
ピロリー菌検査や除菌治療は、胃潰瘍と十二指腸潰瘍等の
ひとでけに認められていてそれ以外は自費ですと言います。

健康保険でピロリー菌検査できるひとは意外と少ない。
症状があっても潰瘍がなければ保険は適応できません。
これはほとんど知られていないので丁寧に説明します。

実はピロリー菌の有無を知るにはいろんな検査があります。
まず、胃粘膜を採取し小さな培地の中に入れるCLOテスト。
あるいは、試薬を飲んで呼気を調べる尿素呼気試験です。

意外に簡単で精度が高いのが、便中ピロリー抗原検査です。
これはお勧めです。
血液中や尿中のピロリー菌抗体検査は感染の既往が分かる。

でも大切なのは、今、ピロリー菌がいるのかいないのか。
ですから、ピロリー菌抗体検査は意外と使い道が少ない。
なんでもいいから調べてくれという人もいて困りますが。

ピロリー菌をB型やC型肝炎ウイルスと同じように
考えているひとが実に多い。
肝炎ウイルスは除去できるならば除去したい悪者です。

もし肝臓がんが出来たりすると、命に関わることがあるから。
ピロリー菌も慢性胃炎を背景に胃がんができることがある。
しかし両者の確率は、格段に違います。

胃痛と聞くと、胃内視鏡検査、ピロリー菌検査を連想します。
ピロリー菌はメタボと同じくらい有名になり市民権を得た。
しかしその割には、基本的なことすら知らないひとが多い。

必要も無いのにピロリー菌ノイローゼになるひともいます。
繰り返しますが日本人の半分が胃中に飼っている細菌です。
正しく知って、正しく恐れてください。

個人的には、ピロリー菌は恐れるに足りない、と思います。
まあ、いないに越したことは無いですが。
チャンスがあれば除菌してもいい。(潰瘍以外は保険外)

逆に、潰瘍持ちの方は、必ず除菌してください。
除菌するか否かで、潰瘍の再発率は雲泥の差です。
潰瘍の本当の意味での治療は、ピロリー菌の除去なのです。

何かと誤解されているピロリー君。
こんなにかわいい名前なのに・・・
診察室では、こんな会話を毎日、毎日、しています。