《0523》 介護心中・予備軍 [未分類]

兵庫県伊丹市で今年7月、悲しい出来事がありました。
91歳の母親と71歳の長女が非業の死を遂げました。
認知症の母の介護に疲れた娘が無理心中を図ったようです。

伊丹市は、私が、幼稚園から高校まで育った土地です。
今も、老いた母親が一人で暮らす町です。
とても他人ごととは思えません。

以前、尼崎の私のクリニックの近くでも介護疲れから
夫が妻を殺した、という悲しい事件がありました。
伊丹と尼崎で、このような事件が起きています。

在宅介護の現実を毎日見ていて、私はこれは
まだまだ氷山の一角だと感じています。
在宅介護の現場は、一般の認識よりずっと厳しい。

「配偶者を殺したい」、「いっそ、一緒に死にたい」
なんて声は、毎日、聞きます。
「先生、ここで殺して」も、毎日のように聞きます。

「早くお迎えが来ないかな」は高齢者全員が言います。
これは自然な言葉だと思っています。
しかし「配偶者や親を殺したい」は、異常です。

口に出すことでガス抜きになっている面もあります。
しかし、本当に深刻なケースが沢山あるのです。
亡くなって初めてニュースになり検証が始まります。

介護心中・予備軍が沢山いるのです。
これは現実です。
ここから考えていくべきではないか。

民生委員会がいるじゃないか、という人がいます。
ボランテイアもいるじゃないか、という人も。
しかし、周囲にそんな人がいない人もいるのです。

民生委員さんの報酬は、ほとんどありません。
民生委員さんの基本は、ボランテイアでしょう。
そんな民生委員さんが公費で年に一度の温泉旅行に行った。

これをマスコミが暴き、叩きました。
行政は謝罪して旅行代金を返させたと記憶します。
これは私の母が住む伊丹市での話です。

私はその時、その時の市長さん(名前は忘れました)に
思わず以下のようなメールをしたことを覚えています。
「民生委員さんの情報交換がなぜ悪いのでしょうか」と。

民生委員同士が情報交換する。
普段の御苦労を公費で慰労する。
これのどこがいけないのか?と質問しました。

無論、返事など来ません。
当然、無視されたのでしょう。
そして数年後にこのような事件が起きた。

私は直観的に両者は無関係では無い、と感じました。
公はボランテイアにもそれなりの配慮をしてもいい。
これからの時代、ボランテイアこそが頼りなのです。

尼崎も伊丹も、民生委員さんが機能しています。
しかし彼らも大いに悩みながら活動しています。
時々彼らから相談されるので知っているのです。

来年春から本格的に「地域包括ケア」の時代に入ります。
ケアマネやヘルパーの役割は今まで以上に高くなります。
しかし、必ず、この網から漏れたひとたちが出てきます。

そこで私は「公的ヘルパー」が必要だと思います。
公的ヘルパーとは文字通り企業に属さないヘルパー。
ボランテイアでも無い公的使命で動くプロヘルパー。

病院に入っても、尊厳ある最期を過ごしにくい。
一方在宅ケアでも、介護疲れで変な気持になる。
大変な時代になったものだと思います。

みんなんで本気になって、このような問題を
考えるところからしか始まらないと思います。
「お互いさま」。共助、の時代にまりました。

今日は、中医協の診療側委員の5人の先生方を
大阪にお迎えしてたくさんの議論をします。
不肖、私は、司会の大役を務めます(3人の一人)。

中医協?
医療費を決めているのは、厚労省でも政治家でもありません。
中医協での議論でみなさまの医療費が決められているのです。

医療費は、2年ごとに改定されます。
介護費は、3年ごとに改定されます。
従って、医療・介護同時改定は、6年毎になります。

来年4月が、6年に1度の医療・介護同時改定です。
しかし、節目の改定まで、もう半年しかありません。
医療・介護には、問題山積ですので大切な時期です。

様々な質問がすでに全国の医師から寄せられています。
どの質問も大切な質問ばかりで、選ぶのに苦労します。
私の専門である在宅医療に関する質問を主に担当します。

本当は医療と介護の連携についても議論したいのですが。
とてもそこまでの時間は無いかと思います。
どんな会になったのか、明日レポートさせて頂きます。