《0527》  日本の医療費は安いか高いか? [未分類]

日本の医療費は、安いか高いか?
100人に聞いたら、ほぼ全員が
「高い!」と答えます。

正解は「極めて安い」、のですが・・・
例えば盲腸の手術費。
日本は1週間入院して30数万円程度。

諸外国では、その2~5倍です。
しかも、入院期間1~2日でこの値段です。
日本は信じられないほどの低価格なのです。

日本の医療者の献身的努力の賜物とも言われています。
こう書くとおそらく怒るひとが多いと予想されるので
詳細を先に書いておきます。

献身的とは、労働量が極めて多いという意味です。
単位時間に診る患者数はおそらく世界一でしょう。
患者さんから見れば「3分診療」と怒られますが。

診療単価は、諸外国の何分の1と低額ですが、
数倍の患者さんを診ることで経営が成り立ちます。
3分間で診ないと「遅い」、と怒られるのですが。

日本の医者は、労働基準法の外に置かれています。
当直明けで一睡もしないまま、手術に入らなくては
手術が回りませんし、患者さんに怒られます。

夜間の救急患者で手が一杯で、新たな受け入れが
出来ないと、「また、たらい回し」と叩かれます。
無理して受け入れて失敗すると「逮捕」されます。

看護師さんは朝になれば帰れますが、医師は帰れません。
様々な職業の中で、24時間勤務しても帰れない職業は
おそらく医師だけであると思います。

常に訴訟ストレスと隣り合わせです。
ですから、医師は一般の方より短命です。
日野原先生は、あくまで例外中の例外です。

医師や一部の医療職の慢性的な過重労働を
前提として日本の医療は成り立っています。
これは本当の話です。

もし、労働基準法を厳密に適応すれば、日本の大半の
病院の病院長は逮捕され日本の病院は機能停止します。
これも本当の話です。

これらは「パンドラの箱を開けよう」(エピック 共著)
という本にも書きました。
本当に開けたら、日本の医療は停止するのです・・

在宅で一人の患者さんを、24時間体制で診るには、
週40時間労働ですから、4人位の医師が必要です。
しかし、実際は一人の医師が診ています。

だからどうだ、という話ではありませんが、
そのような「無理」もあって、世界が驚く
低価格の医療が実現しているのは事実です。

しかし国民は「高い」、と感じています。
しかも、あまり「満足」していません。
ドクターショピングを、繰り返します。

「高い」と感じるのは、窓口負担のことでしょう。
2~3割という負担率は、確かに「保険」としては高い。
「負担率が高い」ことを「医療費が高い」と表現される。

そんなことは知っとる、という人は無視してください。
あくまでも知らない人のために、駄文を書いています。
まあいずれにせよ、悲しいことだと、思いませんか?

まだ、私の話を信用していない人に、もう一言。
心臓マッサージの、保険点数を知っていますか?
人を蘇生するために汗だくになってする、あの行為。

保険点数を考えてそれをする医者などいませんが、
心臓マッサージ1時間の保険点数は2900円です。
肩や腰をマッサージすると5000円位もらえます。

しかし心臓をマッサージしても、たった2900円です。
同じマッサージをするなら、腰の方が儲かります。(冗談)
これで、少しは私の話を信じてもらえるでしょうか。

アメリカの医療が最高だと思っている方には今からでも
マイケル・ムーア監督の映画「シッコ」を見てください。
日本は、ここに向かうのでしょうか。

英国の医療が最高だと思っている方は、英国在住の
日本人の生の声を聞いてください。
本コラムにも書きこんで頂きましたが、その通りです。

以前にもこのようなこと(医療制度)を書きました。
しかし来年春の医療・介護同時改定に向けて、是非
市民の皆様にも考えて頂きたいと思い書いています。