《0528》  延命治療で延命できるか [未分類]

終末期の患者さんに、様々な延命治療が行われます。
認知症で食べられなくなった人に胃瘻が作られます。
ある施設では、胃瘻造設後に約2年生きたそうです。

胃瘻を入れなかった場合、どれだけ生きるのかの
データがありませんので単純な比較は難しいです。
しかし経験的には、1年位は延命できるでしょう。

腎不全になった人に人工透析を行います。
しかしこれを拒否される人も結構います。
透析をしないと死ぬよと一応説明します。

しかし透析拒否のまま20年以上生き延びた
人を診たことがあります。
血清クレアチニン値は24くらいでした。

結局その人には、人工透析は不要だったのです。
これは極端な例ですが、腎不全になったとしても
人間は意外と簡単に死なないことを、知りました。

しかし一般的には、人工透析で少なくとも数年以上
延命できると考えられています。
ですから腎不全の延命術は可能です。

人工呼吸器はどうでしょうか。
肺気腫で、気管切開して人工呼吸器で生きている人。
人工呼吸が無かったら、やはり死ぬでしょう。

点滴はどうでしょうか?
末期がんの場合、高カロリー輸液は死期を早めると思います。
しかし老衰の場合、少量の点滴で延命できる場合があります。

全く食べれない人が、500mlの皮下輸液だけで
何カ月も生きた例が報告されています。
輸液は、やはり延命処置だと思います。

私は、延命治療を3つに分けて考えています。
呼吸、栄養(胃瘻や輸液)、腎不全の3つです。
それぞれに延命の意味合いが少しずつ異なります。

問題は、本人がそれを望むかどうかです。
大半の人は、自分自身には延命治療を望みません。
延命処置には多少の苦痛が伴う場合が多いからです。

人工呼吸や人工透析は、面倒あるいは苦痛があります。
しかし、胃瘻はそれほど苦痛を伴わないと思います。
だから配偶者や家族が望む場合が少なくありません。

さらにその人の年金のために、家族や取り巻きが
胃瘻を望むケースが増えてきました。
年金の支給は本人が死ぬと途絶えます。

そこで自分自身の延命治療は自分で決めたい。
臓器移植提供カードのように普段元気な時から
まさかの時のこ延命処置に意思表示しておきたい。

これがリビングウイルです。
例えば日本尊厳死協会はリビングウイルに自らサインし
原本を協会に保存し意思表示カードを持ち歩きます。

医療機関を受診する時には、カードを提示します。
入院する時にも、そのカードで意思表示をします。
現在、拒否する方法はこの方法しかありません。

自分の意思で自分の延命処置を拒否したいと
願う方が、増えています。
会費を払って入会している人が12.5万人もおられます。

一方、医学の延命技術は発達の一途です。
また、延命を望む家族も増えています。
医療者はその狭間の中で、戸惑っています。

その結果が、40万人の胃瘻患者さんです。
世界的に例を見ない数字。
特養には「胃瘻枠」があり「胃瘻専門の高専賃」がある国。

超高齢化社会において延命議論は必須だと思います。
「尊厳死」と「平穏死」と「自然死」はほぼ同義です。
平穏に死にたいと願っても、平穏に死ねない時代です。

そこで、来月「平穏死の条件」という講演を神戸でします。
どんな話をしようか今から考えています。