《0535》 胃ろう造設のインフォームドコンセント [未分類]

「知らない間に胃瘻を造られていた」と怒る家族が来られた。
病院の先生は、良かれと思って胃瘻を造ったのでしょうが。
「胃瘻=優れた最新栄養法」だから、当然と思ったのでしょう。

ご家族は、自然に任せての尊厳死を望んでおられた。
認知症の本人も元々延命処置を希望していなかった。
本人も家族も願っていないのに反対方向に事は動いた。

認知症終末期の胃瘻のインフォームドコンセントについて。
「胃瘻とはどのようなものか」という説明は、行われます。
「このような仕組みで、このように栄養剤を注入する」と。

家族は、普通、本物の胃瘻を見たこともありません。
「簡単、簡単」との説明に安心して承諾する人が多い。
病院側は「胃瘻」というモノの説明はちゃんと行います。

一方、胃瘻の生物学的・社会学的意義、倫理的側面、
将来像までも説明するお医者さんは少ないのではないか。
「よろず相談室」で相談を受けていて、そう感じます。

胃瘻で元気になったら、口から食べれるのか?
植物状態になって胃瘻を中止したい時、どうなのか?
胃瘻を抜いて欲しい時、抜いてくれるのか?

どれくらい延命できるのか?
医療費はどれくらいかかるのか?
施設や在宅の受け入れ状況はどうなのか?

ご家族は、胃瘻に関する素朴な質問が沢山あるでしょう。
しかしお医者さんも全ての答えを持っているわけではない。
だから「胃瘻そのもの」の説明で終わってしまうようだ。

インフォームドコンセント(IC)とは、充分な説明と同意。
現代医療の基本とされています。
しかし胃瘻において充分なICが行われているとは思えない。

造設の説明に加えて、中止の説明が必要でしょう。
しかし、中止の基準がこの国には無いのです。
ここに胃瘻問題の本質があるのではないか。

医学界では、胃瘻注入の基準を検討しています。
日本尊厳死協会も、延命中止の合法化を訴えています。
医療側と市民側の意見が一致して初めて一歩進みます。

諸外国は、胃瘻問題を克服しました。
フランスでは、2005年にレオネッテイ法という
延命処置中止に関する法律ができて胃瘻問題は解消。

胃瘻問題が存在するのは、世界中で日本だけです。
法律の整備や市民の死生観の成熟が、今後必須です。
病院や医者ばかり責めても事は解決しません。

患者さん側が大きな声を上げないと変わりません。
そこで初めて、本当のICが可能となるのでしょう。