《0549》 平穏死の条件(その10)/24時間ルールを知ること [未分類]

在宅での旅立ちの大半は、平穏死ではないでしょうか。
これは沢山の死に接してきた経験から感じることです。
在宅で看取りたいが看取るのが怖いという人がいます。

在宅死=事件、という誤ったイメージもあります。
研修に来られた医師の大半がそう認識しています。
でも、そもそも在宅死が事件なはずはありません。

医師法20条にはこう書いてあります。
継続して診ていた患者さんが診察後24時間以内に
死亡した場合、患者を診なくても死亡診断書を書ける。

昨日の昼に往診した患者さんが、今朝亡くなった場合、
患者さんのお宅に行かなくても死亡診断書を書いて良い。
これって凄い法律だと思いませんか?

山奥や離島を想定した法律なのでしょう。
死亡時刻はご家族が看取った時間ないし推定で決定します。
在宅では心電図モニターなどありません。

実際は、息を引き取られてから行くことが大半です。
呼ばれて行ったら、息を引き取る直前だったことも。
臨終の瞬間に医療者が居合わせない場合が大半です。

それでも何も問題はありません。
実際は死亡後に患者宅に行かなかったことは皆無ですが。
今まで数時間以上もご家族を待たせたことはありました。

これを「24時間ルール」と呼びますが、大半の医者は
誤解しているか、忘れているのか、のどちらかです。
以下のように誤解している医者が多いこと!

24時間以内に診察していなければ診断書を書けない。
だから警察への通報が必要だ、と。
そんなことはありません。完全な誤解です。

実際、ある特養では入所者が亡くなる度に警察を呼ぶ。
だから施設での看取りは嫌だと管理者が嘆いています。
これは特養の管理医師が医師法20条を誤解している。

ところで医師法20条はいつできた法律でしょうか。
なんと、昭和24年です。
私が生まれる9年前、皆保険制度が出来る11年前。

そんな時代に出来た法律が、現在も充分に機能しています。
この法律が「おおらかな看取り」を保障してくれています。
この法律のおかげで、在宅で平穏死できる、とも言えます。

平穏死の条件その10は、24時間ルールを知ること。
多くの医師が誤解しているこの法律を理解してください。
私は、ありがとう、医師法20条、と言いたいです。

PS)
夜間往診、深夜往診から帰ると今度は早朝往診。
看護師さんもほとんど寝ずに働いています。
しかし医師法21条のおかげで今朝も平穏死です。