《0552》 平穏死の条件(その13)/葬儀屋さんとの連携 [未分類]

在宅でお看取りする場合、亡くなってから伺う事が大半です。
遠方にいた場合息を引き取ってから数時間かかることもある。
昔は、葬儀屋さん、坊さんの後に到着することもありました。

しかし、現在は、医師が来てからでないと受け付けて
くれない大手葬儀屋さんが大半のようです。
社内マニュアルにそう書いてあるそうです。

例えば、深夜2時に亡くなった場合です。
御家族は医者を気使い「朝一番でいいです」と言ってくれます。
しかし多くの葬儀屋さんは医師の後でないと動いてくれません。

「先生、朝でいいって言いましたが、やっぱ、今来てください」
なんて電話が入ったこともあります。
葬儀屋さん内部の取り決めで、医師の診断書が無いと入らない。

かくして深夜に葬儀屋さんと顔合わせすることがよくあります。
5年前位から、市民フォーラムには葬儀屋さんも入っています。
まさか葬儀屋さんとコラボするとは、思っていませんでしたが。

御家族が一番気になるのは「亡くなった後」のことです。
そこが怖いから、「在宅は怖い」、という一面もあります。
そこを一番時間をかけて、あらかじめ説明します。

こんな大事なことなのに誰も教えてくれません。
もちろん医学部でも全く習いません。
だから市民フォーラムで葬儀屋さんと議論するのです。

まれに私より先に入る葬儀屋さんがあります。
私と電話連絡が取れた時点で、看取りとみなしてくれるのか、
まだマニュアルが無い小さな葬儀屋さんなのかわかりません。

しかし最近は、葬儀屋さん同志の協定なのでしょうか、
医師の往診を待ってから動きます。
だから朝一番ならば、葬儀屋さんも朝一番になります。

亡くなった後の事までシミュレーションするのが在宅医です。
ここが病院のお医者さんと、一番違うところです。
「平穏死」とは、「生」と「死後」をつなぐもの。

だから死後のことも準備してはじめて「平穏死」がある。
というわけで、平穏死の条件13番目は、
葬儀屋さんと充分な連携がとれていることです。

普段は連携していません。
しかし患者宅で話す機会が増えました。
葬儀の段取り、直葬についてなどについてお話しします。

患者さん自身が生前に両者を引き合わせることもあります。
普通では考えられないような事が行われる事も実際にある。
平穏死の後は、葬儀も粛々と平穏に行われている印象です。