《0554》 平穏死の条件(その15)/がんも非がんも「脱水は友」 [未分類]

2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死にます。
がんは最もありふれた病気でがんで死ぬ確率が最も高い。
こんな有名な現実が、意外に忘れられている気がします。

がんの治療をいつまで続けるのか?
この命題は現実には難しいです。
亡くなる直前、いや瞬間まで治療したいという人もいます。

本人が希望するのでその通りになる場合があります。
一方、一切の治療を拒否して亡くなる人もおられます。
いつまで続けるかにはその方の生き様が出るようです。

いずれにせよ、最も大切なものは、緩和医療です。
緩和医療という医療の恩恵を受けることが、大切。
痛い、苦しい、のは誰でも嫌ですからね。

がんの治療と緩和医療は並行して行えます。
年単位で同時並行している方もおられます。
これはあまり知られていないかもしれません。

いずれにせよ、その基礎にあるものがあります。
私が一番大切だと思っているのは「脱水」です。
終末期に脱水傾向になることは、好ましいこと。

適度な「脱水」は、苦痛を軽減し寿命を延ばす。
ですから「脱水は友」と、毎日説明しています。
あくまで終末期の話です。

末期がん対象の施設として「ホスピス」が有名です。
仏教がベースになった施設は「ビハーラ」と言います。
このような施設においても脱水は共通の認識でしょう。

私は、がん、とがん以外(非がん)を区別して考えます。
非がんとは、認知症や脳梗塞や神経難病や老衰などです。
これらの病気の最期は、がんと違ってゆっくり訪れます。

在宅医療の期間で言うなら、がんはわずか1ケ月半です。
一方、非がんは、その10倍以上の長期におよびます。
下り坂の勾配が全然違うのです。

非がんにおいても、緩和医療という概念があります。
老衰であっても亡くなる直前には多少の苦痛がある。
死ぬという作業はお産と同様、大変な作業のことも。

非がんの終末期においても「脱水」は良いことです。
ここでも「自然な脱水は友です」と説明しています。
がんと同様、脱水は苦痛を軽減し寿命を延ばします。

がんと非がんでは、死に至る勾配が異なります。
しかし緩和医療は共通。
そして、「脱水は友」も共通。

ということで、
平穏死の条件、15番目は「脱水」だと考えています。
単純な話ですが水分過剰で苦しむ場合も多いようです。

PS)
一昨日は、日本尊厳死協会の常任理事会で上京。
日本尊厳死協会の本部は本郷3丁目にあります。
会議終了後協会の重鎮の方々とお茶をしました。

35年前に、太田典礼先生が作られた日本尊厳死協会。
30年前、大学時代に太田先生の本を読んでいました。
裏を返せば、時間がたっても問題は解決されていない。

尊厳死運動の歴史を記した本を読み直しました。
今も昔も、問題の本質は変わっていないようです。
むしろ、複雑化しているような印象を持ちました。

延命治療が進歩して、死生感が貧弱になった。
誰も解決できないまま35年の歳月が流れています。
あらためて、自分の責務の重さをかみしめました。