《0557》 平穏死の条件(その18)/認知症になる前に意思表示を [未分類]

昨日は日本尊厳死協会関西支部で講演しました。
このブログに書いてきたような内容のお話です。
その後、約1時間の質疑応答の場がありました。

そこで様々な質問を頂きました。
聞きに来てくれたお医者さん達もビックリ。
その中で印象に残った質問を3つほど紹介します。

認知症の人がリビングウイル(LW)を表明できるか?
残念ながら難しいかと思います。
だから認知症になる前にLWを残しておくべきでしょう。

次にがんで治療中だが、脳卒中で意識不明になった時、
LWがあれば救急搬送先での蘇生処置を拒否できるか?
これも残念ながら、難しいと思います。

延命処置と救命処置は違うもので両者の区別はできます。
救命処置から延命処置に至ることはありますが。
そこで問題になるのは、「延命治療の中止」です。

LWのキーワードは以下の3つ。

  • 人間としての尊厳
  • 本人の意思
  • 不治かつ末期

元気な人が急変した時に、救命処置を施さない医療者は
考えられません。
がんで治療中であっても「不治かつ末期」の条件から外れます。

3つめはご家族の意志で認知症終末期患者さんの胃瘻注入を
止められるか?残念ながら、これも難しいと思います。
本人の意思でさえ法的に認知されていない中、家族の意志は未だ。

第一、家族と言ってもバラバラのことが増えました。
家族の意志がどこまで有効なのか疑問を感じることが
シバシバです。

質問を聞きながら感じたことは、

  • 尊厳死への関心はとても高い
  • 胃瘻への関心もとても高い
  • 認知症の心配する人が多い

さらに、ご夫婦であっても一方が亡くなられて
独居になった方の、終末期医療への関心が高いことです。
夫婦ならば相談や助け合いができますが、独居となると・・・

今後の終末期議論は、独居、認知症を想定しなければいけません。
なにか、「死」という課題に、国民も医療界もも法曹界も
向き合ってこなかったつけが一気に回って来た気がします。

まずは、LWを法的に認めることでしょう。
こんなことすら、日本ではまだ出来ていないのです。
尊厳死法制化議連が出来て6年ですが法制化はこれから。

尊厳死で1日が終わりました。
その後、深夜の往診に呼ばれました。
そこでまた尊厳死のお話を1時間半。

帰りのタクシーがなかなかつかまらない。
小1時間、歩いて立っていました。
急に寒くなったことを感じました。

本日は朝日ファミリー主催の講演会でお話します。
昨日と同じ話ができないところが辛いところです。
でも、同じような話になりそうな予感。

ということで、尊厳死の条件、その18は
認知症になる前にLWを表明することです。
簡単そうで実際には難しいと思います。