《0559》 平穏死の条件(その20)/待ったなしのリビングウイル法制化 [未分類]

リビングウイル(LW)とは、治る見込みがなく死期が
近い時に「延命治療はお断りします」という宣誓書です。
生きているときに意味がある書面が、LWです。

死後に意味がある「遺言状」とは全く異なります。
LWは耳慣れない言葉でしょうが覚えてください。
LWのキーワードとして、以下の3つを覚えてください。

  • 人間としての尊厳
  • 本人の意思
  • 不治かつ末期

「尊厳死」を考える時、よく分からなくなったら
この3要件に戻ればいいのです。
では、最後の「不治」とはどんな状態でしょうか。

よく「不治の病」と言われます。
しかし、ここでの不治とは「治癒効果が期待できず、
死への進行が止められなくなった状態」をさします。

また、よく尊厳死と安楽死が間違われます。
尊厳死とは、延命措置を断って自然死を迎えること。
一方、薬物などで死期を早めることが安楽死です。

両者は全く別の概念です。
尊厳死は、自己決定権という人権です。
憲法13条に書かれている幸福追求権。

これを誤解している人が実に多いこと!
安楽死と尊厳死は、全く違うことを
理解することが、とても重要です。

しかし、日本においてはLWはいまだ法制化されていません。
だからLWに従っても下手をすると逮捕されるかもしれない。
「長尾、早く捕まった方が国民のためだ」ともよく言われます。

35年の歴史がある日本尊厳死協会は、協会設立当初から
尊厳死法制化を目指してきました。
2005年に「尊厳死法制化を考える議員連盟」も発足しました。

現在、LWがある時に医師が延命治療を中止した場合、
医師は訴追されない(免責)法案が検討されています。
とりあえず逮捕されないようにし欲しいは全医師の願いです。

尊厳死の3要件を満たすときに、LWに基ずいて
・胃瘻の注入を中止する
・遷延性意識障害の延命処置を中止する、など。

これらは、日本ではまだ無理です。
日本以外の欧米諸国では、当たり前になっています。
フランスでは、2005年のレオネッテイ法が成立。

終末期での尊厳死の具体的手順まで示されました。
そこでは緩和医療と両輪となることが謳われています。
世界中で胃瘻問題があるのは、日本だけ。

胃瘻は、先天性障害の子供のために開発された栄養法。
しかし、日本では老衰などの高齢者に多用されている。
この現実から目をそらして社会保障・税一体改革は無い。

これが、私の意見なのですが、みなさま如何ですか?
尊厳死法制化を願う人が12.5万人加入しています。
お金を払ってまでこれを願う人が、こんなに沢山いる。

私は、これらの市民の勇気に敬服しています。
これらの方の希望を叶えることが、医師としての
務めの大事なひとつだと、ずっと思ってきました。

大学3年生の時、尊厳死の勉強会をしていました。
30年前に、太田典礼先生の名前を知りました。
京都府出身の産婦人科医です。

30年後、私は尊厳死について語る立場になりました。
尊厳死協会の幹部には高名な医師、弁護士、市民など
みなさんボランテイアで走り回わっておられます。

今秋から尊厳死法制化議連の活動も、活発化していきます。
日本人の死生観が法律で担保されることを願って止みません。
私も微力ながら、協力を惜しみません。

平穏死の条件、その20、最終章です。
それは「尊厳死法制化」を成し遂げることです。
やはり法的根拠が、なにより大切です。

「尊厳死」という言葉が怖ければ、
「リビングウイル」に置き換えても構いません。
とにかく「死」を国民全体で正面視してほしい。

超高齢化に伴う多死社会。
もはや、「死」は、タブーではない。
LWとは本人の意志で延命治療をお断りする権利。

そんな基本的人権が認められていない国、日本。
在宅では尊厳死出来るが病院ではできにくい国。
そろそろ、みんなで本気で考えましょう!

(このシリーズ、終わり)