《0567》 デイホームと街中サロン「なじみ庵」 [未分類]

昨日は、第8回尼崎生と死を考える市民フォーラムでした。
春はがん、秋は認知症をテーマに4年前から続けています。
昔は小規模な市民講座を毎週やっていましたが現在は2回。

昨日のゲストは栃木県のNPO法人「ゆいの里」の飯島惠子さん。
栃木の街中にあるサロン「なじみ庵」を主宰されている方です。

1996年から活動しているゆいの里の合言葉は、「ほっとすっぺ!」
そして、なじみ庵のキーワードは「ケアされる人から、支え合う人へ」。

ゆいの里が介護保険の前から手づくりしてきた
「デイホームホッとスペースゆい」は、民家を利用して、
認知症の人が安心できる少人数の個別ケアを提供しています。

介護保険がはじまり、「小規模型通所介護(デイサービス)」になりました。
このデイホームで実践している自立支援介護のかたちを
街の中に持っていったのが「街中サロンなじみ庵」、介護保険外施設。

ここはマンション1階の2店舗をつないだ食堂と工房(フリースペース)
があって、誰でも利用できる街の中のお店です。

なじみ庵の会員は那須塩原市内の65歳以上の方。
月200円の会費を払って、ボランティア保険に加入したら、
それぞれの特技や知恵や技を活かして、なじみ庵の運営に参加します。

地産地消、旬産旬食の「日替わりおふくろの味ランチ」をつくるのは、
80代のおふくろさんたちが主力、ランチは会員は300円、一般は500円。

そのランチを目的に、妻を介護中や看取った70代から90代の男性たちが
三々五々、集まってきます。食後は、健康麻雀や五目並べ、オセロにおしゃべり。

介護予防と仲間づくりの「転ばぬ先の知恵教室」
「物忘れ知らず教室」はいつも満員状態。

会員がしたいことをする自主グループ活動は、
歌声喫茶、般若心経を学ぶ会、切り絵や折り紙、
百人一首、大正琴を楽しむ会、五目並べの会など、
実に多くの活動が行われています。

足が不自由だったり、自力で来られない会員の送迎も若手の会員が担っています。
地域の中で、ゆるやかに老いや認知症を受けとめて、
お互い様で、支え合う安心な居場所がなじみ庵です。

認知症があるから、体が不自由だから、
一方的にお世話をしてもらう、ではありません。
障害や認知症があっても、その人の出きる事は自分でやる。

これは、「自己資源の活用」というそうです。

介護保険下のデイサービスは一定の型にはめられたもの。
しかし、「なじみ庵」は街の中のお店、つどい場ですから、自由です。
会員は食事をして1日楽しんで300円ポッキリ(昼食代)と聞いてビックリ。

デイサービスだと、1日何千円もの費用がかかりますから、
「なじみ庵」は介護保険料を大幅節約しているとも言えます。
会員さんたちのボランティアがなじみ庵の活動を支えていますが、
当然、運営は大変厳しいようです。なにせ300円ですから。

尼崎出身のスタッフ、主任コーディネーター堀内陽子さんが支えておられます。
尼崎と栃木にこんなご縁があったなんて。
まさに、「ゆい(結)の里」だなーと思いました。

「ゆいの里」は、16年目を迎えるそうです。
ちょうど当院の歴史と同じです。
飯島さんも栃木で理想の介護やまちづくりを求めてここまで来られた・・・

彼女と同じ時代を生きてきた。
医療と介護では、少し役割は違うかもしれませんが、
「生活を診る」、「人間を診る」のは共通だとも思います。

介護保険制度が出来て11年。
確かに「介護」が「市民権」を獲得しました。
しかし今なお何かモヤモヤした思いが残ります。

介護の人はみんな「介護保険が出来てから介護が悪くなった」
というようなことを言います。
1年前、介護の全国大会で講演した時にも言われました。

朝、無理やり車が来て「拉致」される。
楽しくなくても一緒に歌を歌わされる。
定めらたスケジュール優先。

こうした介護生活は一見いいようですが、老人の潜在能力
を奪ってはいないか、日頃から気になっていました。
あれ以外、どこかひ弱な老人が増えたようにも感じます。

特に認知症になれば、「してもらう」一方です。
残存能力、自己資源の活用はどこかに飛びます。
しかし残った能力をもっと活用すべきではないか。

飯島さんは、笑顔で頑張っておられまます。
来年から本格的に「地域包括ケア」の時代です。
中学校区をひとつの病院と考え在宅療養が柱になります。

そんな中、認知症になっても安心して住み続けられる
「地域づくり」が全国的に急務です。
いよいよ本気で「地域全体が病院」感覚が必要になります。

西宮市には、「つどい場さくらちゃん」があります。
「つどい場」と「なじみ庵」は、言葉は違えど、
内容は非常によく似ていると思いました。

もうひとつの共通点は、「まじくる」です。
老若男女、職種を超えてフラットな関係性。
「集って」「まじくる」こそが、これからのキーワード。

これからは、「介護」の時代。
どんな介護をするのか。
そして介護されるだけではなく、支えあう、時代へ。

全国各地にこのような「場」が出来たらいいなと思いました。
行政や医療はもっとこのような志の高いNPOを支援すべき。
そんなイメージを膨ませて頂いた飯島さんに感謝いたします。

PS)

「なごみ庵」ではございません。
「なじみ庵」です。念のため。
わかるかなー、この違い。なんちゃって!