日本人の2人に1人が、がんになる。
認知症の患者さんも半分は、がんになる。
そもそも認知症の患者さんは急増している。
近い将来65歳以上の8人に1人が認知症になるという。
だから認知症を合併したがん患者を受け持つことがよくある。
もはやそんなことは、決して稀なことではない。
認知症のある方とない方では、同じ末期がんになっても
経過が全然違う。
認知症があった方が、経過が断然いい。
正直な話、認知症を合併したがん患者さんが大好きだ。
認知症があるということで、きつい治療をしなくていい。
認知症があるということで、入院から在宅医療に回される。
認知症がある方は、痛みに対して鈍感な事が多い。
沢山の麻薬を使わなくて済むことが多い。
これは沢山経験した在宅医の経験から言えること。
要するに、「いいことだらけの在宅医療」が可能なのだ。
ある在宅医の宴会で、自分自身は認知症かがんの
どちらになりたいか聞いてみた。
認知症、と答えた医者が多かったのは意外だった。
第3話は、肺がんが脳転移した認知症患者さんのお話にしよう。
認知症だけでも大変なのに、脳転移までしてしまうなんて。
それを在宅で診るなんて、さぞかし大変なことだと思うだろう。
しかし、それが真反対。
実に穏やかな経過で、最期の最期まで食べていた。
在宅という「場」が、とてもよく似合う患者さんだった。
この患者さんがどのような経過を辿ったのか振り返ってみたい。
(つづく)