《0059》 がんの「免疫細胞療法」 [未分類]

第4の治療法と言われて久しい、「免疫療法」。
「がんが転移した」と言われた患者さんなら、一度は耳にしたことがあるでしょう。
先週、私が世話人を務める阪神間の在宅ホスピス医らが集まり、
免疫療法専門クリニックの院長先生の講演を聴く機会がありました。
かなり突っ込んだ議論を交わしましたので、一端をご紹介します。

これは患者さんの細胞を使う治療法であり、強い副作用はありません。
一部の白血病を除くほぼすべてのがんに適応があるとされています。
大学病院や民間医療施設で、10年以上前から行われてきました。

免疫細胞療法には、「活性化自己リンパ球療法」と「樹状細胞ワクチン療法」の
2種類があります。
「活性化自己リンパ球療法」は、患者さんから約20?採血して、約1000倍に
増殖させた活性化リンパ球を点滴で体内に戻す治療法です。
治療サイクルは、採血と点滴によるプロセスを2週間ごとに6回繰り返し、
約3カ月で1コース終了です。
1コースが終了した時点で、CTや腫瘍マーカーで効果判定をします。
治療費は1クール、約150万円です。

「樹状細胞ワクチン療法」は、患者さんから切り取ったがん組織を樹状細胞に
取り込ませた後に患者さんに注射します。
それにより、がんを効率よく攻撃できるというコンセプトの治療法です。
がんを手術して切り取り、そのがん組織が実際にあることが条件です。

残念ながら、免疫細胞療法単独での有効性はまだ証明されていません。
したがって、抗がん剤や放射線治療などの標準治療と併用するのが通常です。
本来は、がんの再発予防がターゲットだそうです。

しかし実際には、免疫細胞療法単独にすがっている末期がん患者さんが、
私の周囲にも相当数おられます。
病院の主治医に黙って免疫療法を行っている患者さんもおられます。

私のような在宅ホスピス医が、免疫細胞療法を受けておられる最中の
患者さんの主治医になることがしばしばあります。
クール宅急便で自宅に送られてくる袋を、黙って点滴します。

こうして在宅ホスピス医たちは恨めしい思いで、 「免疫細胞療法」を見てきました。
なぜ「恨めしい」のでしょうか?
続きます。