《0006》 現代の「赤ひげ」はどこにいる? [未分類]

前回、在宅療養支援診療所という制度があることを書きました。

その在宅療養支援診療所の届けを出さないのに、携帯番号を教え、ほぼ24時間体制で在宅医療を行っている診療所も結構あります。
どのくらいあるのか、その数は把握されていないと思います。
これには2つの場合が想定されます。 

ひとつは、患者さんの自己負担を軽減する目的です。
在宅療養支援診療所は、24時間体制を組まなければならないため、報酬が高く設定されています。
いつもそうですが、1割負担であれ3割負担であれ、「医者が儲かる=患者は損する(下品な表現ですみません)」という関係にあります。
自分の労働対価は堂々と請求したいと考える医者が、私を含めて大半かもしれません。

しかし、患者さんの自己負担を軽減するために敢えて低い点数で請求して、在宅療養支援診療所の届け出なぞ不要という診療所が実際にあります。
昔から地域の町医者として自然な形で看取ってきた年配の先生に多いようです。
彼らは昔から「普通に=高い点数を取らずに」看取っています。
これこそ現代の「赤ひげ」なのかもしれません。 

もうひとつは、在宅療養支援診療所に登録していても、何らかの理由で実際に「24時間対応」していない場合で、高い点数では請求していないケースです。
これは相当数あると思います。
「今時、在宅療養支援診療所の看板だけはとりあえず出しておこう」、という風潮もあるようです。

患者さんにしてみれば、「看板に偽りあり」なのですが、看板を揚げていても、在宅療養支援診療所に設定された高い点数で請求していなければ、制度上は、まったく問題はありません。

在宅療養支援診療所とは、本来の趣旨は「在宅看取り」まで行う診療所です。
年間看取り数を年1回お役所に届けなければなりません。
その結果、全国の在宅療養支援診療所での看取り数合計は、正確に把握されています。
ちなみに平成20年度の悪性腫瘍の在宅看取り率のトップはなんと我が兵庫県で、12.3%でした。 

一方、死亡診断書の死亡場所が「自宅」に○がついてある数字も把握されています。両者を引き算した数字が、本当の「赤ひげ」先生や、24時間対応に自信がないので在宅療養支援診療所の看板を揚げない町医者が看取った数字と解釈されています。

「訪問診療と往診の違い」には、意外と深いモノが隠れているのです。