《0602》 遠くの親戚問題 [未分類]

在宅看取りの最大の敵は、スバリ「遠くの親戚」だ。
本人が納得して家で療養し自然に衰弱し、ご家族には看取りの話も
全部済んであとは診守るだけという時に、突然現れる「遠くの親戚」。

「こんな悪いのに家に置いといて!」
「なんで救急車を呼ばないんだ!」
と言って、家族やケアマネを怒鳴り、慌てて救急車を要請する。

私が訪問した時には家は抜け殻になっていたことが2、3度あった。

在宅医であれば一度はこの問題を経験している。
仲間内では「遠く親戚問題」と呼んでいる。
そう呼ぶからには、ちゃんと対策もたてている。

家族に説明する時に、予め「遠くの親戚問題」も話しておく。
「遠くの親戚が来て怒鳴っても慌てないようにね」
「本人と家族が決めたことと、ちゃんと説明してね」と。

完全な独居、天涯孤独と聞いていたひとにも、最期になると
「遠くの親戚」が登場して、大ドンデン返しになることも。
「あんた、この子のなんなのさ?」という時もある。

私たちには、どこまでが家族なのか良く分からない。
法律的には、3親等とか6親等とかあるのだろうが。
現実には隣近所のおっちゃん、おばちゃんも口を出す。

「こんなに悪いのに、家に置いといてどうするの?」とか
「家で死んだら資産価値が下がるのよ!」と言う人まで・・・
看取りに至るまでの障害は、多分に本人以外にあるのだ。

実習に来る研修医や若い医者でさえ、全員がこう言う。
「こんなに悪いのに入院させないで逮捕されないのか?」
「こんなに悪いから自宅にいるんだよ」と私。

もう慣れたし、自信がついた。
本当の看取りの後には遠くの親戚もこう言ってくれるから。
「先生、家で亡くなるって、幸せなことですね!!」