《0607》 夜回り先生 [未分類]

週に1~2人のペースで看取りがある。
いや正確には死亡診断書を書いている。
老衰もあれば、末期がんや難病もある。

週に1~2人看取るには、週に2回は
夜間に講演をするということだ。
1時間以上、療養・看取り講演をする。

昨夜も一昨日も夜9時から1時間、
家族内講演会をしていた。
深夜に2時間くらいすることもある。

なぜ夜9時なのか。
夕飯が終わって家族全員が集まれるのがこの時間。
子供たちも、まだ起きている時間。

小さな子どもでも、大人たちの異様な雰囲気を察知する。
もちろん、本人には聞こえない場所で、お話をする。
本人の前では、バッドニュースは一切しない。

これまでの経過と今後の見通し。
緩和医療の詳細説明にはじまり
激しい痛みへの具体的対処法。

麻薬の副作用対策。
麻薬増量の理論的根拠。
鎮痛補助薬併用の意義。

どのような過ごし方が理想なのか。
何をどう、どれくらい、食べればいいのか。

死ぬ前に1日だけもがくことがあること。
その時は、安定剤の座薬を使う事。

努力様呼吸から下顎呼吸までの実演。
看取りの現場に医療者はいない事。
看取りの法律の説明。

救急車を呼ばないこと。
絶対に慌てない事。
私に電話をして待つこと。

死亡時刻の決め方。
亡くなった後の衣装。
葬儀屋を予め決めておくこと・・・

これらを説明しているとあっという間に
1時間が過ぎる。
何百回もしているので上手くなった。

最初は不安げな家族も、1時間後には
安心、納得、となり、笑顔さえ生まれる。
その先に、「在宅看取り」がある。

エネルギーの8割を、家族に注いでいることを
患者さんに申し訳ないと感じる時がある。
しかしご家族に説明するのも大切な仕事。

天涯孤独の場合家族説明が要らない分、
本人にエネルギーが注げるのが嬉しい。
まあ、そう多くはないが、たまにある。

夜にも活動する。
在宅医に、夜も昼も無い。
「夜回り先生」という言葉を思い出す。

在宅死とは平穏死。
在宅死とは満足死。
満足するのは、本人とご家族だ。

家族の満足なしの「平穏死」はあり得ない。