《0611》 尊厳死の家族会議(その2) [未分類]

深夜の家族会議の様子を再現しよう。
まず私が病状説明をしてから今後の可能性を話した。
病院に入院した場合に、どのような処置をするのか。

簡単に言えば、ICU(集中治療室)的な管理になる。
心臓に関わる薬はごく少量ずつポンプで点滴で送りこむ。
ポタポタというアバウトではなくデジタルで入れて行く。

複数の種類の薬剤を血管に入れる。
強心剤、昇圧剤、心不全のお薬や利尿剤など。
中心静脈ルートという鎖骨の下からの点滴になる。

当然、本人は嫌がる。
暴れるといけないので、お薬で寝てもらう。
麻酔のようなものだ。

当然、人工透析も回すことになる。
慢性腎不全に慢性心不全なのだ。
要するに肝腎な臓器が連鎖的に機能低下している状態だ。

集中管理すれば、少しはもち直すかもしれない。
上手く行けば、退院⇒維持透析まで行けるかもしれない。
その可能性は、私的には、10%くらいかなと感じた。

このままだと0%だから、10%という数字でも、かなりの可能性だ。
「この10%に賭けてみまずか?どうですか?」
無論、麻酔など様々な「嫌なこと」を乗り越えないといけないですが。

さらに、もし家に帰れても一番嫌な「透析」を続けなくてはいけない。
延命治療は、一度始めたら中止できないのが、現状だ。
死ぬまで止めることが出来ないのが、延命治療なのだ。

隣の一流病院に入院するか?自宅で死を待つのか?
右へ行くのか?左へ行くのか?
どちらかを、今、ここで決めてください!

深夜に、10人位の家族会議で「講演」した後にそう問うた。
説明のつもりがつい力が入って、「講演」になってしまった。
みなさん泣いていた。

相談は無かった。
代表者が「家で看ます」と、静かに言われた。
家族の腹は、もう決まっていたのだ。

1時間の話合いが終わると、家族の顔に安堵の表情があった。
涙の中にも笑顔が戻った。
私もどこか嬉しかった。

帰る前、再び本人に聞いてみた。
「本当にこれでいいのですか?」と。
すると「これでいいよ」と答えられた。

休日も看護師が訪問し、在宅で出来る治療を続けている。
在宅医療に休みがないのは、病院と同じだ。
休日は全国から集まったご家族で合宿所のような感じだった

昨日の訪問時には、ひ孫ちゃんが来ていた。
一緒に寝かせて写真を撮ることを提案した。
子供が遊ぶ声の中、本人はウトウトしていた。

きっと安心しているのだろう。
満足しているのだろう。
家族とともにとても「平穏」な雰囲気を感じた。

そして、、、まだ終わっていない・・・
なんとかクリスマスを迎えるのが目標だ。
平穏死の前に、平穏にクリスマスを迎えさせてあげたい。

(このシリーズ終わり)