《0630》 大阪・胃瘻いろいろ物語 [未分類]

昨日は第二回近畿在宅医療推進フォーラムが開催されました。
テーマは、胃瘻問題でしした。
胃瘻作成のベテラン医師による基調講演で会は始りました。

その後は「いさむじいさん、大阪・胃瘻いろいろ物語」の寸劇でした。
私は胃瘻を勧める浪速総合病院の内科部長役を演じました。
口下手で演技下手なので、一生懸命演じたつもりです。

いさむじいいさんとは、住野勇氏。
オートバックスの会長さんであり
勇美記念財団の理事長さんです。

住野氏はいわば、日本の在宅医療の生みの親です。
在宅医療推進の強力なスポンサー役をかって頂いている大御仁です。
その住野氏が、99歳の認知症役を引き受け見事に演じ切りました。

私は病院の担当医として胃瘻を強引に勧め、彼に胃瘻を入れました。
みなさん、ほとんどがアドリブ演技。
しかし見事なはまり役ばかりで、会場は大爆笑でした。

そして最後には植物状態になる「長年してきた胃瘻を中止したい」という
ご家族の希望をどう叶えるか、という議論になりました。
弁護士さんにも登場頂き、終末期の法的問題も議論しました。

「胃瘻をしていて植物状態になったとき注入を中止したことがあるひと?」
との質問に、会場のかなりの数の方医療者が手を挙げられたのには驚きました。
在宅現場では、自然な形での尊厳死が浸透しつつあるように感じました。

しかし昨日は、所詮、在宅医療関係者中心のフォーラムでした。
本当はこの寸劇こそ、病院のお医者さんに見て頂きたいと思いました。
病院のお医者さんと在宅医の胃瘻への感覚はかなりの温度差があります。

さらにもっと多くの市民のみなさまにも見て欲しい。
自分自身の問題、家族の問題として考えて欲しいと思いました。
もはや胃瘻議論抜きで高齢者医療は語れない時代になりました。

日々、比較的安易に作られている日本の胃瘻。
もちろん必要な胃瘻も多いでしょう。
しかし最終的には注入を止めて時が欲しい時期が来て悩むひとが多い。

本人が胃瘻を入れないことを希望していれば本当に胃瘻は入らないか?
本人の意思と家族の意思が異なる時、家族の意思は無視してもいいか?
胃瘻からの栄養剤注入を中止しても、医師は、本当に訴えられないか?

様々な終末期議論が今後、なされることでしょう。
終末期議論は、胃瘻問題から入ると分かりやすいし、
病気としては、認知症や老衰が、議論し易いと思います。

難しい議論より、演劇の方が伝える力が強いと思いました。
先日、東京の高円寺で見た「死に顔ピース」を思い出しました。
久々に泣いた素晴らしい演劇です。

昨日は、朝から東京から医学生が当院に勉強に来られていました。
外来、在宅、そしてこのフォーラムと強烈な関西パワーを味わって頂きました。
新年早々の大切なフォーラムが無事終了し、ホッと一息ついています。