《0644》 「老人長屋」でインフルが出た!(その1) [未分類]

いわゆる「老人長屋」に往診に呼ばれました。
いつも元気な老人が発熱し少し弱っていると。
嫌な予感がしました。

やはりA型インフルエンザでした。
さっそく特効薬の点滴をしました。
しかしその患者さんは、理解できません。

その「老人長屋」とは、真中に1本の廊下があり
廊下の両側に、各部屋が並んでいる構造です。
中央にみんなで食事をする大きなスペースがある。

廊下には犬がいて、番犬の役割をしています。
全体の玄関には鍵も無く、出入りは自由です。
和のテイストが素敵な、くつろげる長屋です。

住人の大半は程度の差はあれ認知症の方です。
しかし自由、気まままに生活できる場所です。
この緩やかな造りが、今回、悩みの種になりました。

その老人長屋でははじめてのインフル患者でした。
当然、集団感染が気になります。
老人はインフルには、最も弱い集団です。

問題は、その老人が、毎日、徘徊することです。
というかその長屋を自由に動くもとが彼の楽しみ。
しかし本当にそうすると、集団感染の可能性がある。

管理者は反射的に「先生、入院を!」と言いました。
管理者として当然浮かぶ感染拡大防止策でしょう。
しかしそんな簡単な問題ではないとすぐに気がつきました。

(つづく)

PS)
以下、昨日のグリーンカーテンさんの質問へのお返事です。

発熱後半日程度経たないと簡易検査が陽性にならない印象です。
かといって翌日来て頂くのも二度手間になりますし困ったもの。
誰がどう診てもインフルしか考えられないのに検査は陰性。

従って、「陰性でも陽性」、として治療することもあります。
このようなケースを、時々経験します。
ケースバイケースですが、現場の医師なら知っています。

ですから、発熱があればすぐに受診して頂いて結構です。
わざわざ待つ必要はありません。
ただ検査が陰性になることもあると、言いたかっただけです。

タミフルは、発熱後時間が経てば、意味がなくなります。
すでに48時間以上経過していれば、私は投与しません。
抗インフル薬は、治るのを2日間短縮すると説明します。

学校を休むのは5日間と指導しますが、実際には完全に
解熱して咳も収まれば、登校できると思います。
あくまでひとつの目安として、私はそう説明しています。

というのも翌日も無理して働いているひとが多いからです。
「昨日他の医者でインフルと診断されたが、まだしんどい」
と言って当院を初診されるひとが実に多いのです。

「どうして休まなかったの?」と聞いても
「医者が休めと言わなかったから」と返ってきます。
ですから、症状が収まるまで休みように説明します。

基本的には、自己責任と良識の問題だと思います。
ただ医師は休養と感染拡大策を説明する義務があります。
特効薬の進化で、治るまでの期間は少し短縮しています。

嘔吐・下痢症は、インフル長屋の話が終わってからにします。