《0697》 再び、「移動」という尊厳 [未分類]

施設内をうろうろする認知症患者さんを毎日診ます。
独居の認知症患者さんは徘徊で迷子になって保護されます。
末期がんの方も、旅立つ1週間前まで買い物に出ています。

人間は移動する動物。

移動を制限された時、そこを「牢屋」と呼びます。
病院に入院するとは、ある面では、軟禁状態です。
しかし病気を治してくれるので我慢して軟禁に耐えます。

さて、被災地の仮設住宅や自主避難宅はどうでしょうか?
どこかに気晴らしや買い物に行きたくても行けません。
移動するお金が無いからです。

西日本の温泉が無料開放して待っていても誰も来なかった。
行きたくても移動することができなかったのです。
移動には、常に高いコストが必要です。

被災証明がある人に、新幹線や鉄道やバスの無料パスを
発行するという提案。期間限定でもいいのです。
「移動」という人間の尊厳を守るためのアイデアです。

国会でも一瞬だけ議論して頂きました。
メデイアでも少し取り上げて頂きました。
しかし笑うばかりで本気で取り合ってくれませんでした。

孤独死や自殺を含めた震災関連死が1000人単位で
出てきていると報道されています。
せっかく助かった命が無為に奪われていく現実に耐えれません。

全国各地の志の高い方と被災者の交流が報道されています。
嬉しい交流です。日本の底力を感じます。
しかし交流できるのは一部のひとたちです。

できれば全ての被災者にこころおきなく
全国各地に遊びに行って交流して欲しい。
そろそろそんな時期ではないでしょうか。

再び、「移動」という尊厳
を、この場をお借りしてみなさまに問いたいのです。
あの時頂いたご署名を、どこかで活かしたいのです。

東北の高速道路は限られた人しか使えません。
大半の人は、バスや鉄道やタクシーでしょう。
普通の被災者、名も無い被災者の移動が気になります。